エッセイ

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セミナー「竹中恵美子に学ぶ」(11)コーディネーター報告 植本眞砂子

2011.05.14 Sat

4月22日、第11回のセミナーは、昨年5月スタートして約1年、第12回の最終回は拡大バージョンなので、実質受講生のみのセミナーとしては最後になる回でした。

「男女雇用政策の今ー世界の流れと日本」が今回のテーマで、「1.男女雇用政策のいまー世界の流れ」「2.日本の政策の到達点と問題点―格差社会の中のジェンダー」そして、「3.取り残されてきた問題についてー税制・社会保険制度改革のあるべき改革の方向」という組み立てでした。第5回の先生の講義では、「ジェンダーから見た税・社会保険制度」が積み残しとなっており、今回の講義では、それが3番目の柱でした。その中で、この間の問題点と<最近の動向>として「第3次男女共同参画基本計画」における第2分野「男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し、意識の改革」と民主党の年金制度改革案(2011年4月16日)と連合の「新21世紀社会保障ビジョン」の特徴をお示しいただきました。

コーディネーターを担当した企画委員の分担で、第11回の担当になった私ですが、たまたま具合の悪くなった方の代理で、第5回も担当しました。奇しくも竹中先生体調絶不良の日で、講義のみで帰宅していただいた後のコーディネーターからの問題提起と討論は、労働組合の現在・過去・未来に関するものになりました。そのことを思い出しながら、今回の「めざす社会についての合意形成と労働運動の役割」を考えようという問題提起をさせていただきました。

ひとつは、2009年9月の「政権交代」で何が変わり、何が変わらなかったのか?

あの政権交代は、格差拡大への不満・不安、年金不信、60年の自民党支配の澱みへの厭世感などでの変化を求める投票行動で、「めざす社会」が一致していたわけではなかったのでないか⇒めざす社会のイメージ、短期・中期・長期それぞれの課題の共有と解決に向けたアクションを起こしていく必要があるのではないか。

二つ目には、この間の男女雇用政策の変遷と今後について考えよう。

均等待遇、ディーセントワークの実現には性に中立な税・社会保障制度の確立が不可欠である。雇用政策は社会保障全般の中で国民の暮らし働く権利帆所運保管店から議論していくべきである。民主党のマニフェストで「子ども手当」の財源として扶養控除の廃止と子どもを「社会の子」として捉える視点が提起されたとき、私はすとんとお腹に落ちたが、予算編成の中でゆり戻しがあり、中途半端なものになってきており、大震災の復興財源論の中に組み込まれていっている。一方、政府は、大震災はあったが「社会保障に関する検討会議」の6月中に結論というスケジュールを変えていない。しっかりと議論に参画し、発信していく必要があります。

三つ目には、「男女共同参画第3次基本計画」は、国際連合「女子差別撤廃委員会」の日本に対する最終見解(2009年8月)の「実効性あるアクションプランの必要性」に応えたものとされています。この間の、計画や制度改正、法改正は、国内の運動の力とともに、「国際社会の圧力」が影響している。運動の側も含めてこれを有効に活用していく必要があります。国際的な表現「言葉」を得て見えて来るもの・力になるものも「アンペイドワーク、セクシャルハラスメント、ポジティブアクション、ドメスティックバイオレンス」などなど、この間多くあった。国際的な動きにも関心を持ち、世界の女性たちとも繋がって行きたいと考えます。

四つ目には、めざすべき社会のビジョンを議論して行こうということ。

連合は21世紀ビジョンでめざす社会を「労働を中心とした福祉型社会」と提起し、その基礎に男女平等参画社会と資源循環型社会があると掲げ、誰でもが公平に働き、一人ひとりが税・社会保険を負担し、そのことで社会保障(医療・年金・介護・子育てなど)が充実し、その安心でいっそう労働に参画できる好循環社会を推進しようとしてきました。提起から10年を経て、この間の社会の変化、格差社会の現状などを踏ま、2010年12月「働くことを軸とした安心社会」を改めて提起しました。それは、「会社での仕事や、地域のボランティア、炊事洗濯といった家事労働。私たちの日常は多くの人たちが働き、互いに支えあうことで成り立っています。しかし、失業や就職難、家庭の事情など、働きたくても働けない現実もあります。さまざまな困難を取り除き、『働きたい』という思いを実現するには、雇用につながる5つの『安心の橋』が必要です」「『安心の橋』を架けて、誰もが働き、つながることができるようになれば、人々は活き活きとやりがいを持って働けて、安心してくらすことができ、社会は活力を増していきます」として、「雇用=働く形を自由にする橋:公正なワークルールのもと、自分の意志で正規・非正規など働き方を選べる」「家族=家族と雇用をつなぐ橋:介護や子育てで就労をあきらめない」「教育=教育と雇用をつなぐ橋:働くために必要な学力を習得する機会を保障」「失業=失業と雇用をつなぐ橋:失業してもやり直せる制度の橋」「退職=退職と雇用をつなぐ橋:生涯現役でいられる制度の整備」という5つの橋を雇用の橋を中心に4方向に架けるというものです。

私は、この連合の提起の合意を求めているのではなく、それぞれが、めざす社会はどんな社会かを考える材料にしていただきたいということです。

その後の質疑討論で、参加者から「社会保障と税制の関連」「ヨーロッパの税・社会保障関連費用の負担」「消費税と累進税」「子ども手当について」などの意見が活発に出され、このような討論をもう少しじっくりと続けたいと思いながら、佳境に入ったときに時間切れとなってしまいました。

私は、組合活動の中で、いつも仲間の皆さんに「今あるさまざまな制度は、『先輩からの贈り物』であり、私たちは、その包みを大きくし結びなおして後輩に送っていく役割がある」と語ってきました。私自身は「包み」を大きくして後輩に引き継げたか自信がありません。であるがゆえに、今後、議論が活発化するであろう「ベーシックインカム」の課題も含め、女性の働き方、働かせられ方が今の税制・社会保障制度に大きく影響することを念頭に、トータルビジョンの議論と、そのベースになる雇用平等制度⇒「ディーセントワーク」実現に向けた取り組みを、「腹をすえて」やっていこうと改めて決意いたしました。

5月27日は残っていますが、1年間お疲れ様でしたと受講者お互いに肩をたたき、竹中先生に感謝し、和やかな記念撮影で終了した第11回セミナーでした。

カテゴリー:セミナー「竹中恵美子に学ぶ」 / シリーズ

タグ:労働 / 竹中恵美子 / 雇用 / 植本眞砂子