原発ゼロの道 エッセイ

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原発と原爆 岡野八代 原発を問う民衆法廷 その5 広島法廷 ④

2012.08.08 Wed

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.さて、藤田さんの怒涛のような証言の興奮冷めやらぬなか、判事のお一人鵜飼哲さんが、一言貴重な意見を述べられた。それは、もし、安全保障問題、つまり核兵器保持と原発推進が表裏一体なのであれば、どうしてドイツが脱原発を為し得たのかを考えてみるべきだろう、というお言葉でした。

たしかに、ドイツでは、欧州における歴史的立場、そして、EUの中での主権の枠組みの変化によって、ドイツが核兵器をもつ、という選択肢はあまり想定できません。原発問題と主権国家(つまり、単独で軍隊を持ちたいという国家意志の問題)とが、密接に関わっていることが、ドイツの例からも考えることができる、ということなのです。

広島での法廷では本当に多くのことを考えさせられました。そして、最後の証言に立たれたのは、宗藤尚三さん。広島での被爆体験を通じて、キリスト者の道を歩むことを決められた平和活動家です。宗籐さんのおじは、作家の倉田百三だということです。

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.宗籐さんは、被爆した当時、広島大学で応用科学を研究されていたところ、被爆経験から、生きる意味や目的、悲惨な虐殺の様子を目の当たりにして、人間とは何者かと考えるようになったと証言されました。

本当に理不尽な無差別殺人が、こうして人を哲学的な問いへと向かわせる、という証言は、家畜の虐殺に反対した、エム牧場の吉沢さんも証言されたことでした。

宗籐さんは、地球規模で戦後繰り返されてきた核実験は2,000回にも及ぶことを指摘されたあと、「みなさんも、ヒバクシャです」と発言されました。放射能を浴び続けていなければならないこの理不尽さは、世界中にヒバクシャというアイデンティティを拡散し、そして連帯させることにつながるはずなのです。

宗籐さんは、そうした連帯を模索し、「さよなら原発広島の会」の発起人の一人となりました。その会発足のさいのエピソードを一つ紹介してくれました。

代表の一人である作家のアーサー・ビナードさんに、広島平和記念公園にある原爆死没者慰霊碑の石室前面に書かれた「過ちは繰返しませぬから」という言葉を英語なら、なんと訳すかと問うたらしいのです。とっさの宗籐さんの質問に、思わずビナードさんは、mistake と答えたとのことでした。

この文言については、主語は誰なのか、といったことなど、さまざまに論争されますが、この「過ち」という言葉そのものにも、やはり問題があります。宗籐さんは、アインシュタインの言葉を惹きつつ、この原爆という「過ち」は、absolute evil すなわち、これ以上ない悪、究極的な悪なのだと答えられました。

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また、同じ広島出身の詩人、栗原貞子さんの「一度目は あやまちでも 二度目は 裏切りだ 死者たちへの誓いを忘れまい」という言葉を引用されながら、ご自身もまた、被爆経験のあと、こうして証人として人びとの前で語ることが奇跡であるとも述べられるのです。本当の証人は、おそらく、栗原さんも、宗籐さんも目の当たりにした声なき被爆者たちなのでしょう。

宗籐さんは証言のなかで、「また、加害者になろうとしている」とおっしゃいました。この言葉の主語は、誰なのでしょう?おそらく、ここで原子力のもつ歴史的意味、日本政治における現実、安全保障問題などに無知なまま、目の前の安楽な生活に流されていくわたしたちなのかもしれません。

7月の広島民衆法廷が終わり、今現在予定されているのは12月の北海道での開催です。それまでに、わたしたち市民の声が、政治の中枢へと響き渡ることを願ってやみません。

(「脱原発国会大包囲」が東京にて開催される、7月29日記)。








カテゴリー:脱原発に向けた動き / 震災 / シリーズ

タグ:脱原発 / 原発 / 岡野八代 / 放射能汚染

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