エッセイ

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Girrls ∞Luv! に見る新しい運動スタイル  桂 容子

2013.03.29 Fri

 若い人の運動の展開に、大きな感動を覚えています。肩肘張らず、おしゃれに、ポップに、セクシュアルマイノリティの運動が展開されています。

「女の子同士の恋愛」をテーマにしたフリーマガジンGirrls ∞Luv! の3号目が出ました。

 3号目は、最初のページをめくると、「KISS IN」の写真が。クリスマス直前の賑やかな道頓堀で行われたとか。「KISS IN」は、ホモフォビアに反対する運動として、「誰を愛しても自由」というメッセージを伝えるために街中でキスをするイベント。恋人ではなく友だちの場合は、ハグし合うのだそうです。30人くらいが集合して行われたそうです。若い人の考えることは面白いですね。

 深刻で、告発型の運動が主流だった時代とは、隔世の感があります。
 もちろん、シリアスな運動やたくさんの犠牲の上に、今の時代が訪れたのだと思います。これまでの動きはとても貴重な財産で、その心意気は継承されてほしいと思います。でも、やり方はほんとに変わって来たのだなと思います。実に、軽やかで楽しげ。

 「アライ」ということばも最近よく聞きますが、興味深いです。「アライ」(ally)というのは協力者・味方というような意味で、共に運動を支える人たちのことです。「ストレート・アライ」とも書かれているので、セクシュアルマイノリティではない人が関わるのにとてもハードルが低くなります。

 さらに、最近は、LGBTQという表現が使われています。LGBTは既に知られていると思いますが、「Q」というのはまだあまり知られていないかもしれません。マガジンの裏表紙にはセクシュアリティの用語解説も書かれています。「Q」はクエスチョニングのことで、自分のセクシュアリティを決めかねている人、セクシュアリティをあえて決めない立場の人と解説されています。
 私は、今まで、とてもたくさんの女性達が、自分のセクシュアリティをわからないと言うのを聞いてきました。レズビアンやトランスジェンダー当事者に遭遇して、あらためて自分を見つめ直し問い直す機会を持ち、なおかつ結論が出ない、という人が多くおられたように思います。老いも若きも、結婚している人も子どものいる人も、いろいろな立場の人が悩んでおられました。「私は何なのか、知りたい」と答を求める人、「レズビアンではないと思うけど」と断りながら女性とのエピソードを語り出す人、、、。そんな人たちにとって、この「Q」は、とりあえず、ホッとすることができる位置のように思えます。既存の概念に自分をはめたくない人もいるでしょうし。

 「アライ」の位置にも、そういう意味で私は希望を持てるように思います。「Q – アライ」というような位置取りで、もっと楽に運動に関わる人も出て来ると良いのではないかと思ったりしています。

 あれもあり! これもあり! 他者を否定しない、誹謗しない。走るのもあり、泳ぐのもあり、潜るのもあり、地を這うのもあり、ピョンピョンするのもあり、動かないように見えて動くのもあり、、、。運動の仕方も様々にあるのが良いように思います。

 うかうかすると、またすぐに怖い時代になって、一人ひとりの自由なんて許されない社会が訪れるかもしれません。いつのまにか、そんな時代になっていたということのないように、自由や公正を求めるセンサーを働かせていたいものです。暗い時代が来る前に、それを押しとどめる力を養いたいと思います。
 今、できることをやっておかねば、と思います。
 
 若い人たちの軽やかな運動を応援したいと思っています。ぜひ、サイトを覗いてみてください。(http://girrlsluv.com/)

カテゴリー:投稿エッセイ

タグ:ファッション / 桂容子 / 雑誌