2014.09.18 Thu
DV夫と会わない方法【打越さく良の離婚ガイド】NO.3-12(37)
DV夫と会わないで済む方法はないか
夫に対して離婚訴訟を提起しています。DVをふるってきた夫と会う必要がありますか。怖くてたまらないので、裁判所に行かないで済む方法を裁判所はとってくれませんか。
◎ 代理人をたてる
あなたとお子さんの前ではあなたに暴力をふるっても、第三者の目があればふるわない。そうはわかっていても、その前後で遭遇して暴力をふるわれるのではないか、或いは彼を見かけただけで怖い記憶が沸き上がり、過呼吸になってしまう。そんな場合には裁判所だろうと夫と対面したら心身の健康がおびやかされかねません。迷わず、代理人をつけましょう。何度か説明した通り、費用が負担できない場合には、法テラスを利用しましょう。
家事調停、審判では、原則として、代理人をつけても、本人も出席する必要があります(家事事件手続法258条1項、51条2項)。しかし、訴訟には、このような原則規定はありません。実際にも、弁論や弁論準備期日には、代理人だけが出席していることがほとんどです。
代理人に出席してもらえたら、裁判所に行かなくて済みます。
◎ 尋問では
しかし、本人尋問が実施される場合、あなた自身が裁判所に行って出席しなければなりません。夫と顔を合わせると恐怖で尋問に応えられなくなってしまう、尋問の前後で暴力を振るわれたら怖い…。そんな場合には、裁判所に、遮へい措置(民事訴訟法203条の3)をとってもらう、或いは、ビデオリンク方式(民事訴訟法204条)による実施を求めましょう。遮へい措置とは、夫の前に衝立をたててもらい、あなたから夫の姿が見えないし、夫からもあなたが見えないようにしてもらうことです。ビデオリンク方式とは、裁判所内の別の部屋にあなたが待機し、裁判官や夫、夫の代理人、あなたの代理人は法廷にいて、テレビ画面を通じて、尋問を実施するというものです。さらに一人では不安な場合、付添い(民事訴訟法203条の2)を求めることもできます。あなたの緊張を和らげてくれる方に付き添ってもらうといいでしょう。私の経験では、DV被害者支援団体の方などに頼んでいる方もいました。なお付添の方の名前とあなたとの関係は調書に記載されます(民事訴訟規則122条の2・2校)。DVの結果精神的に病気になってしまった場合、その前の段階で、離婚訴訟の証拠として、診断書等を提出したと思いますが、これらの措置が必要であることを裏付けるために、要望書に診断書等を添付することもあります。
裁判所は、以上の要望を受けると、夫にも意見を求めた上で、措置をとるかどうかを判断します(民事訴訟規則122条の2・122条の3・123条)。
◎ 和解の際
離婚訴訟の途中で、和解で離婚を成立させることができます。判決と同じ効力をもつ和解調書を裁判所に作成してもらえます。離婚という身分行為には代理は親しまないとして、和解の席に当事者の出席が求められることが多いです。その場合にも、裁判官、書記官、双方の代理人は和解の席(弁論準備室)にいて、原告と被告が交互に入り、裁判官が2回読み上げて、成立することとし、当事者同士は顔を合せないで済むように、調整してもらえます。事前に要望しておきましょう。待合室付近でも会わなくて済むように、裁判所に打ち合わせておくといいでしょう。
裁判官によっては、代理人を通じての意思確認で足りるとして、当事者本人が出席していなくても、和解を成立してくれる場合もあります。しかし、最後の詰めのところで、実は自分の考えとは若干違う条項になってしまったなんてことになっても、取り返しがつきませんから、できれば出席したほうがいいように思います。
カテゴリー:打越さく良の離婚ガイド
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