2014.11.05 Wed
時間が経つのは本当に早いもの。2009年の秋に始めた韓国ドラマ講座もかれこれ6年目を迎えようとしている。この間、各地で多くのドラマファンと出会い、語らってきた。ここら辺でその中間報告をしてみたい。というのも、先月ソウルで開かれた韓国日語日文学会の国際学術シンポジウムで「韓国ドラマ講座を通してみる日韓関係」という題で発表し、ドラマ講座の足跡を振り返る機会を与えられたのだ(写真)。以下、その際に整理したドラマ講座活動の概要をご紹介したい。
ドラマ講座とは?
まず、ドラマ講座とは何かについて説明しておきたい。これは簡単にいえば、韓国ドラマを題材にしておこなう講演のことである。ドラマ講座が生まれたきっかけは近所の女性との立ち話。彼女の決断力と実行力のおかげで、その井戸端会議はたちまち公民館の市民企画講座(全5回)に発展した。そして、その講座の参加者から「次は私たちの所で」と依頼され、次々と講座が開かれた。基本的にはそれが今まで続いてきたのである。
つまり最初だけは私も企画に加わったけれど、それ以降はすべて依頼される形で行っている。正直言って、こんなに続くとは思っていなかった。私にとっては井戸端会議を続けているようなもの。ドラマのことを話すのは楽しくてしょうがないので、呼ばれれば喜んで出かけて行って話す。また、集まってくれる人びとはたいていドラマ好き。みな一生懸命耳を傾けてくれるので、なお一層話に熱がはいる(写真:高松市のドラマ講座が始まる前の様子)。
ドラマ講座の概要
これまでの開催回数や開催地、主催者などをまとめると以下の通りである。私が今年3月まで関西在住だったので、やはりほとんどが関西地方での開催である。地域の男女共同参画センターなどが企画したものが半数以上を占めており、参加者の大部分は中高年層の女性である。
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事項 |
概要 |
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期間 |
2009.9~現在 62ヶ月(5年2ヶ月) |
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開催回数 |
約120回(テーマ別全回数)、月平均2回 |
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主催者 |
男女共同参画センターなど地方公共関連団体5~6割 その他市民団体、女性団体、韓国文化院、在日女性団体 大学など |
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開催地 |
大阪府(箕面市、摂津市、茨木市、高槻市、泉大津市、貝塚市、堺市、八尾市、東大阪市、豊中市、伊丹市ほか)、大阪市、兵庫県(姫路市、尼崎市、赤穂市ほか)、愛知県春日井市、名古屋市、京都府(綾部市、長岡京市)、京都市、津市、山口市、出雲市、松江市、鳥取市、淡路市、栗東市、高松市、東京都(八王子、調布)、岩手県、群馬県草津市、福井県、富山県など。 *同じ場所で複数回開催しているところがある。 |
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開催時間帯 |
日中(午前、午後)が9割、夜間1割 |
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参加費 |
約8割は無料。有料の場合、多くは500円以内。 市民人権大学院(じんけんSCHOLA)は少々高めの1500円 |
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参加者 およその延べ人数 |
10人~750人、延べ約5000人(一回平均40人) 30人以内の小規模講座が約8割 |
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参加者 性比 |
約8~9割が女性 |
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年齢層 |
50代以上の中高年層がほとんど。20~30代はたまに見かける程度 |
(手元の資料から作成)
講座のテーマ
ドラマ講座のテーマを決めるのは基本的に主催者である。主催者が大枠を決め、私が具体的なタイトルを決めるパターンが多い。5年の間にだんだんバリエーションが増えてきた(写真:綾部市「韓国ドラマで楽しく学ぼう!~お隣の国の男女共同参画~」今年6月)。講座のテーマを大きく分類すると以下の通りである(詳しくはhttp://yeongae.blog.fc2.com/blog-category-3.htmlを参照)。
Ⅰ. 韓国社会を知る
・ドラマを通して韓国社会を知る
・ドラマが描く韓国の“大統領”
・「妻の資格」を通してみる韓国社会
Ⅱ. 女性学/ジェンダー、女性運動、エンパワメント
・韓国ドラマで学ぶ女性学
・韓国ドラマで学ぶジェンダー
・韓国ドラマを楽しむ~女風~
・韓国の女性運動と韓国ドラマ~描かれた女性たちと、生きた女性たちの歩みと~
・韓国の女性たちが選んだドラマ~男女平等放送賞受賞作~
・韓国ドラマ/映画に見る家父長制とジェンダー
Ⅲ. 家族と女性の生き方
・韓国ドラマにみる家族と女性の生き方
・韓国ドラマに見る女性たちの生き方~儒教的家父長社会・家族の変化
・ドラマで見る韓国~女性像の歴史的変遷~
・韓国ドラマ再発見~知らなかった韓国女性の姿~
・ドラマにみる妊娠と出産
・「千万回愛してます」を通して考える代理母問題
Ⅳ. 歴史と文化
・韓国ドラマで学ぶ歴史と文化
・韓国ドラマのストーリーと伝来説話
・ドラマでたどる韓国現代史と日本
・ドラマで学ぶ韓国女性史
・韓流ドラマに学ぶ女たちの歴史
Ⅴ. 人権
・韓国ドラマを通して考える外国人の人権
・韓国ドラマに見る“多文化社会”
・韓国ドラマでみる差別と人権
Ⅵ. ドラマ史・作家論
・ドラマで知る韓国社会~ドラマの変遷史~
・人気脚本家、金秀賢ドラマに描かれた女性たち
・ドラマ作家の系譜~チョン・ユギョン~
・崔賢瓊ドラマの家族
はじめの頃は、テーマと結びつくドラマを一つ取り上げて、それをじっくり吟味したあとで、背景について語るというパターンだった。だが次第に、テーマに関連して複数のドラマを取り上げるようになり、挿入するエピソードも増えた。特に一回ぽっきりのドラマ講座では、韓国ドラマの歴史的な変遷なども併せて紹介し、なるべく多くの情報を提供するようにしている。講座の時間はかつても今も同じ(1時間半~2時間)なので、中身が増えるにしたがって早口でしゃべるようになった(写真:松江市「おがっちの韓国さらん公開講座」の様子。今年1月)。
参加者たちの反応
毎回主催者が行うアンケートからは、「ドラマの背景がよくわかった」「韓国の女性の立場が理解できた」などと、概ね満足していただいているようだ。中には、韓国の女性たちについてまだまだ知りたいことがたくさんあるからもっと講座をやってほしい、という要望もある。ドラマファンの韓国に対する関心や好奇心がいかに強いかを示しているのではないだろうか。そして、当然のことながら、ドラマファンたちは韓国に対して好感をもち、友好的な意識をもっていることがアンケートの記載から伝わってくる。
ドラマ講座をしながら感じるのは、「冬ソナ」や「チャングム」からドラマを見始めた韓流一世代の人々は、その後もドラマを見続けて批評眼を養ってきたということ。ヨン様に熱狂していた頃とはレベルが違うのだ。韓国に出かけて直に感じ、韓国語を学び、文化を学ぶ人々も決して少なくない(写真:じんけんSCHOLAの受講生たちの強い要望で実現したソウルツアー。4人のドラマ作家たちと歓談。今年7月)。
“嫌韓”やヘイトスピーチで影響を受けるのは主に“韓流”を商売にしている人たちだ。マルハンが韓流テーマパーク計画を取りやめたり、地上波テレビが韓国ドラマ放送枠を削ってしまったのもその類である。しかし、ドラマファンが“嫌韓”でドラマを見なくなったという話はあまり聞いたことがない。ドラマファンたちは韓国ドラマが地上波で放送されなくなっても、BSや衛星放送、DVDやインターネットで見続けている。“嫌韓”やヘイトスピーチなどどこ吹く風、いや、そんな社会から逃避すべく家に閉じこもって韓国ドラマを見て癒されようとしているのかもしれない。
女たちをつなぐ講座
ドラマ講座は孤立している女性たちをつなぐ場でもある。普段女性たちはドラマを家で、一人で見ることが多い。だからドラマ講座はそんな女性たちが出会い、語り合う場になる。実際にドラマ講座がきっかけで、ドラマについて語る会をつくった人々もいる。韓国ドラマを通して女性の交友関係や活動範囲が広がり、社会との接点ができるのだ。そんな意味で、私はこれからもドラマ講座を続けたいと思う。これまでのように“招かれて”講座を行う形式ばかりでなく、ドラマ講座を自ら企画して積極的に講座活動を展開することも考えてみたいと思っている(写真:調布でのドラマ講座。韓国料理を作って食べながら。今年9月)。ちなみにドラマ講座をご希望の方は「ヨンエの韓国ドラマカフェ」(http://yeongae.blog.fc2.com/)のメールフォームからお気軽にご相談ください~!
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