2015.09.18 Fri
49 面会交流2 遠隔地の場合
離婚して、子どもは父である私が引き取り、引き続き埼玉県内で生活しています。元妻は宮崎県の実家に戻りました。元妻が子どもと会いにきたい、でもお金がないから交通費、さらには日帰りは難しいから宿泊身も負担してくれと言ってきました。それも月1回と言います。私自身そんなに余裕はないので、負担できません。
また、元妻は、会わせてくれと言うばかりで、養育費を全然支払ってくれません。1円も払ってくれない元妻が母親なんだから会わせろと言ってくるのも、気分が良くないです。会わせなければならないものでしょうか。
◎ 遠隔地に居住している場合
一般的には面会交流は「月1回」などといわれますが、ケースバイケースです。
監護親(このケースの場合、父)と非監護親(母)の居住地が離れている場合など、月1回の実施は、現実的には困難が予想されます。
費用等、両親にとっての負担のみならず、子どもにとって、幼少であればあるほど、長距離の移動は心身に負担でしょう。年齢が高い子どもであれば、部活動や勉強、友だちづきあいなどの時間も大切になってきます。やはり遠隔地に居住している場合は特に、無理のない頻度の取決めをしたいものです。
たとえば、夏休み、冬休み、春休みの長期休暇中ごと、とするのが適当なこともあるでしょう。その場合、ふだんあまり会えない分、無理がなければ、宿泊を認めてもいいのではないでしょうか。
また、会えない期間、電話や手紙、メールやLINEのやりとりを認めてはいかがでしょうか。まだ子どもが小さくて自分で電話や手紙、メール等が難しい場合には、監護親が子どもの成長ぶりを記載した手紙に写真や動画をつけて送ってあげるということもありえます。
◎ 交通費等の負担
遠隔地に居住している場合、交通費や宿泊費用をどのように負担するかも、実際上問題となります。
宿泊付面会を認めた審判例でも、費用のことまでは判断しないものの方が多いです(かなり古いですが、東京家審昭和44年5月22日家月22巻3号77頁など)。
仙台市にいる父が、子ども(2歳)を連れて札幌市に転居し別居した妻に対して、面会交流を求めるとともに、多額の交通費を自分だけが負担するのは公平ではないと主張した事案で、原原審(札幌家裁)は、面会交流が子の居住先から遠隔地で行われるとなると、長距離移動の負担を子に負わせることから、仙台市で実施することは相当ではないとし、さらに、子の福祉のために実施する面会交流に係る費用は、各自負担とするのが公平とし、父の交通費は父が負担することを公平としました。この判断にあたって、原原審は、生活費をめぐり口論等が続くことが耐えられなかった母が別居したこと、子をずっと世話してきた母が子を伴って別居したことを「連れ去り」と評価することはできないとも述べています。夫は抗告、特別抗告をしましたが、原審札幌高裁平成24年10月3日も、最高裁第二小法廷平成24年12月19日決定(判時2206号20頁)も斥けました。
とはいえ、ケースバイケースです。このケースの場合で、監護親が全く負担しないとなると、経済的余裕のない非監護親と子は結局会えないということになりかねません。
監護親が全額負担しないまでも、半額程度負担することも、考慮にいれてはいかがでしょうか。
◎ 養育費の不払い
養育費も払わない一方の親に会わせたくない、と思うお気持ち、よくわかります。
しかし、養育費の支払いと面会交流は性質の異なる問題で、養育費を支払わないからといって、ただちに会わせなくてよいということにはなりません(逆に、会わせてもらえないからといって、養育費を支払わなくてよいということもありません)。
とはいえ、養育費も子どもの成長にとっては大切なことです。養育費を払ってほしいと要請してはいかがでしょうか。一所懸命就職活動をしているがみつからない、病気で働けない、といった事情がわかれば、こちらもいらいらしなくて済みます。一定の収入があるのに出し渋っているという場合であれば、別途調停や審判を申立てましょう(家事事件手続法39条、別表第二・3項、244条)。
養育費は養育費で手続をとるとして、面会交流は別のこととして話し合ってみてください。
カテゴリー:打越さく良の離婚ガイド
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