2011.12.08 Thu
本発表は、商店街を、「中間層化」と「近代家族化」の二つが交錯するなかで成立した歴史的構築物であることを指摘する。「中間層の拡大」は、二〇世紀の多くの国が追い求めた夢であったが、これまで「工業化」から理解されてきた。しかし、戦間期から高度成長以前まで、多くの離農者は、工業セクターより小売セクターに移行していた。よって、中間層化といったとき、当時は、零細小売層の安定化も意味していたのである。こうした問題関心のなかで成立した理念が「商店街」だった。つまり、「商店街」とは、単なる地理的概念ではなく、下層へと没落しがちであった零細小売層を中間層化するプロジェクトの謂いであった。また、この時に構想された商店街は、「イエ」的な経営主体ではなく、近代家族の規範を内面化した層によって担われた。現在、商店街が衰退しているが、それは、「中間層化」と「近代家族化」の二つが終焉したことで、必然的に生じたものであることが、本発表によって明らかにされるだろう。