2012.12.30 Sun
年の瀬…ようやくブログの更新をする余裕が生まれました。年末のお届けがこんな内容とは、と思いましたが。12月16日の選挙結果が出て以降、がっくり。
それまで1ヶ月、選挙に向けて「ジェンダー平等政策」キャンペーンと同時期の脱原発世界会議への参加のふたつのプロジェクトに走りまわっていましたから、力が脱けました。「復興」どころか「復旧」政権、文字どおり「旧に復した」面々の顔を見ていると胸が悪くなります。女性議員は16人減少。全政党アンケート結果を見てくださればわかりますが、多数派に選ばれたのは「ジェンダー平等政策」に消極的で女性やマイノリティの権利を守る気がない、と回答した政党でした。
http://p-wan.jp/site/
政権に就いた自民党は党3役にふたりの女性、閣僚にもふたりの女性を登用しましたが、これまでも反動的な言動をくりかえしてきた女性ばかりです。女が「女にやさしい」政策を実行するとは限らない…その事実を、鉄の女、サッチャー首相を経験したイギリス女性はよく知っていますし、パク・クネ大統領を選んだ韓国女性たちもこれから経験するでしょう。女なら誰でもいいのか…そういう問いをつきつけられる程度には、権力の中にいる女性も多様化してきたということでしょうか。
以下は年末に京都新聞に掲載した評論から。
*********************
「女にきびしい」政権の誕生?
暗い時代が始まる。脱原発派と護憲派、ジェンダー平等派にとって。教育現場にとってもだ。インフレ、借金、東アジアの緊張、貧困と格差、弱者切り捨て…亡国政権の始まりだ。
3.11以後初の国政選挙で自民党が政権復帰。諸外国には、日本国民が原発継続を選んだ、と見えるだろう。東電福島原発事故に関しては、前政権の危機対応のつたなさがあげつらわれるが、もとはといえば、フクシマの事故を招く原因を長期にわたってつくったのは、元の自民党政権である。責任者をだれひとり追求せず、処罰せず、原因究明すらできていない状況で、いわば事故の「戦犯」ともいうべきひとびとを、有権者はふたたび政権の座に就けてしまった。
嘉田滋賀県知事がたちあげた日本未来の党は、卒原発を旗幟鮮明に掲げたが、求心力を持てなかった。かつて大飯原発再稼働反対で一致した関西広域連合の首長たちの立場は、ふたつに分かれた。橋下大阪市長は石原慎太郎にとりこまれ、脱原発の旗を降ろした。その石原都政の後継指名を受けた猪瀬直樹新都知事は、さっそく「電力の安定供給」を唱えはじめた。東電の大株主である東京都は、東電の原発再稼働路線を促進するだろう。
こんどの選挙にあたって複数の女性団体と個人(12月10日現在で賛同人24団体280名)が連携して、「ジェンダー平等政策」全政党アンケートを実施した。12政党中10政党から回答を得た結果は「市民と政治をつなぐ」P-WANサイト上にアップしてある。(http://p-wan.jp/site/)それというのも、脱原発や消費税、TPPなどの争点に隠れて「ジェンダー平等政策」がなかなか浮上してこないのに、それが「隠れた争点」であると考えたからだ。
ワーキンググループで協議して作成した26の政策リストは、2009年国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)から日本政府が受けた、5項目19条にわたる勧告にもとづくもの。政策リストには「政党の候補者リストにクオータ制(女性割当制)を導入する」とか「選択的夫婦別姓を実現する」「保育所・学童保育の待機児童の解消など子育て支援策を強化する」などが入っている。国連の勧告にはないが、独自に加えたのが「憲法九条を厳守する」「2030年までに原発をゼロにする」つまり不戦と非核である。平和と非核は、「男女平等」の大前提という思いをこめたものだ。
各政党の回答を分析してみると脱原発を支持する政党ほど男女平等にも積極的であり、また「九条」を守る政党ほど男女平等度が高かった。おもしろいのは規制緩和と自由競争を支持する政党は、「女性の活用」には積極的なのに、「女性の権利」を守ることには積極的でない、という共通点が見られたことだ。なるほど、女にも働いてもらいたい、だが自分たちにつごうのよい働き方をしてもらいたい…というネオリベ派のホンネがよく見える。
選挙結果はこれから先の日本の女性のゆくえをも左右するだろう。「自助」の重視という名目で社会保障を抑制し、弱者切り捨て路線を採用する新政権に、女性や若者、高齢者などの社会的弱者は、自ら合意を与えたのだろうか?
(京都新聞2012年12月27日付け)
カテゴリー:ブログ