2013.07.28 Sun
アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください. 社会学者上野千鶴子が、文学のフィールドに降りたって、「ことば」を、「おい」を、「おんな」を、「うた」を、「こころ」を語る。
なぜなら『「文学」は言語表現の聖域、なんかではない。文学もまた時代と状況の産物であり、それを産んだ時代の文脈と切り離せない。しかも学者の書いた本なんかより、ずっとたくさん読者に読まれている。そう考えれば、文学作品は第一級の歴史・民族資料と言ってよいが、これまで文学は作家主義と作品主義に阻まれて、そういうふうには読まれてこなかった。』(本文p.284~285)からだ。
この本は「文学を社会学する」と言い、「考えたことは売りますが、感じたことは売りません。」とみずからを律している上野さんだが、ふと感じられる彼女の感情を見逃せない。文学に時代が映し出され、文学に心がむき出しになり、文学にまた心が揺さぶられる。そして、癒されることもある。
ことばで伝えていくことを生業とする以上、社会学者であるまえに人であることは言うまでもないだろう。心に届く言葉には、思想と実践に支えられ、気づく人に迎えられるという宿命があると思う。この本はわたしに、絵空事でない現実の世界に、そんな気づきを呼び覚ましてくれる。
上野さんが言う。「彼岸ではなく、いま・ここにとどまって」と。上野千鶴子の仕事がこうして心に錨を落とす。
堀 紀美子
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