上野研究室

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なぜナチスを阻止できなかったか ちづこのブログNo.92

2015.07.09 Thu

ドイツの敗戦の後、「なぜナチスを阻止できなかったか」と問われて、マルチン・ニーメラー牧師が残したと言われる告白があります。有名な文章なのでご存じの方も多いでしょうが、ここではネットから採用した日本語訳をあげました。
「ナチスが共産主義者を攻撃したとき、自分はすこし不安であったが、自分は共産主義者でなかった。だから何も行動にでなかった。次にナチスは社会主義者を攻撃した。自分はさらに不安を感じたが、社会主義者でなかったから何も行動にでなかった。
それからナチスは学校、新聞、ユダヤ人等をどんどん攻撃し、自分はそのたびにいつも不安を感じたが、それでもなお行動にでることはなかった。それからナチスは教会を攻撃した。自分は牧師であった。だから立って行動に出たが、そのときはすでにおそかった。」

今や日本は政治権力が「学校」と「新聞」を攻撃する段階に至りました。
メディアは攻撃と介入を受けています。TV局は政権党から「呼び出し」を受け、「みなさまのNHK」は「アベさまのNHK」となり、沖縄の地元紙2紙は「つぶせ」と言われ、政府に反対の論陣を張るメディアには「スポンサーがしめつけろ」と政権党の党員が居丈高に叫びます。
学校にもとっくに締め付けがきています。公立学校にはとっくに「君が代・日の丸」をめぐる教員の処分が継続しています。高校にも、「18歳選挙権」実施にともなう「主権者教育」のなかで「政治的中立性」を保たない教員は処罰するという動きがあります。
大学にも攻撃が来ています。学校行事に「君が代・日の丸」を強要し従わなければ交付金でペナルティを与えるでしょうし、「人文系学部」を廃止せよ、と迫っています。自由にモノを考える人材を育てたくないのでしょう。
いやな予測ですが、アベ政権は近い将来、教育委員会廃止を唱えるでしょう。そうなれば学校行政は自治体首長が任命する教育長に一元化され、「教科書採択」は首長の意向しだい、となるでしょう。
教育とメディアは、最大最強の国民教育の装置です。いえ、国民洗脳装置と言い換えてもかまいません。そのふたつを手中に収めたいアベ政権の野望は着々と進行しています。
アベの盟友である麻生副総理が「憲法はある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口に学んだらどうかね」というとおりの状況が進んでいるのです。

なぜあのとき、あなたは止められなかったの?と後から来る世代に責められないために。
手遅れにならないうちに。
いまのうちに。

カテゴリー:ブログ

タグ:憲法・平和 / 子育て・教育 / 上野千鶴子