2013.11.19 Tue
女性学/ジェンダー研究博士論文データベースを作った理由
女性学/ジェンダー研究(以下WS/GS)博士論文データベースを作ろうと考えた主な理由は、WS/GS博士論文の情報を集めることに意義がある、ということでした。国立会図書館・国立情報学研究所「博士論文書誌データベースには、1984年以降に国内の大学で博士学位を授与されたすべての博士論文の書誌情報が収録されています。名古屋大学大学院国際開発研究科「学位論文を探すサイト」の「日本で受理された学位論文を探す」には、このほか、「学位論文のタイトル・要旨・全文等を公開しているサイト」(博士論文)大学別100、学会・分野別3、「学位論文を販売しているサイト」大学別2、会社2計107サイトが網羅されています。
しかし、WS/GSの博士論文のみを登録したものはありません。WS/GSに特化した博士論文データベースができることで、WS/GSの研究者・大学院生が、まとまった研究情報を入手しやすくなります。また、新たな集積のしくみを1つ加えることで、研究間の相互作用、学問としての歴史的記録や検証の促進に貢献し得るのではないでしょうか。
そもそも、日本のWS/GSは、学問領域として独立や大学の学部・学科等の設置よりむしろ、あらゆる学問に課題認識を持ち込むかたちで発展してきました。ちなみに大学では、2013年4月現在、2つの大学院に、WS/GSを専門とする前期(修士)2課程、後期(博士)1課程が開設されています。学士課程では、1大学に主専攻(教養学部gender and sexuality studies主専攻)、9大学に10コースの副専攻が開設されていますが、WS/GSを専門とする学部・学科はありません。こうした発展経緯は、日本のWS/GSの知とその生産過程に固有の強み・可能性をもたらしてきた面があるに違いありません。
しかし一方、とくに、大学に学部・学科をもたない学問であることは、体系的な知の形成・集積と担い手の育成に関しては、不利な面があると言わざるを得ません。大学に、WS/GSの知の創出を目的とする部門とWS/GSの教育研究を主な職務として勤める教員がわずかしかなく、上記gender and sexuality studies主専攻を唯一の例外として大学でこれらを専門に学ぶ学生がないということだからです。WS/GS博士論文データベースの作成は、こうして知を集積して活用する体制に他学問に比べて弱い面のあるWS/GSの、知の集積・活用のしくみを1つ増やすことにならないでしょうか。
WS/GS博士論文データベースの特徴
博士論文自体は作成数も所蔵場所も限られており、閲覧も入手もしにくいものです。一方、論文が図書として出版されていたり、論文の一部が学術雑誌に掲載されていれば、それらは入手しやすくなります。そのため、収集入手のために、当初から国立会図書館・国立情報学研究所「博士論文書誌データベース」にすでに登録されている書誌情報だけでなく、当該論文を所蔵する「機関リポジトリ」と公刊の有無を調べ、ある場合にはその内容を記録しました。データベース化した場合、これらの情報は利用者を本文・要旨・出版された図書・学術雑誌掲載論文等に直接つなぐものとなります。
引用文献・資料
カテゴリー:女性学/ジェンダー研究博士論文データベース