第32回WAN上野ゼミ
飽くなき日本近代帝国:「他者を食べる」物語と記憶
(谷崎潤一郎、林芙美子の小説と成瀬巳喜男の翻案映画を中心に)

日時: 2016年12月11日 16:00-18:00
場所: 武蔵野タワーズ(スカイゲートタワー2階)集会室(呼出し番号 200)

報告者: 堀口典子(テネシー大学 准教授)
     テネシー大学 准教授 (2009年—現在)
     専門は日本近代文学・文化史
     現在の研究テーマは日本近代帝国と食の言説

懇親会: 同日18:30~20:30
場所:  武蔵野タワーズ(スカイクロスタワー23階)ラウンジ(呼出し番号 300)

申し込み:WAN法人会員 先行参加申し込み 11月30日(水)まで
     一般参加申し込み 12月1日(木)~

報告概要:
アジア太平洋戦争の敗戦の要因となった食糧補給の面からみると、戦前の日本軍戦死者の60%は、飢餓・栄養失調により命を落とし、また戦後も、飢えにより多くの死者を出している。このように「食べ物」(food)は一方で、生命の維持、成長のための栄養源であり、食べ物の不足は文字通り、身体を脆弱にし、死にも至らしめる。他方、「食べ物」は、メタファー(比喩)に冨み、日本近代帝国の建設、拡張、崩壊の物語とその記憶を構築する。

本報告では(1)「自己」が「他者を食べる」概念と行為は、「他者」を消費、同化、排斥(ジャック・デリダ、ベル・フックス)する、という問題提起をし、(2)飢え、渇望し、食べる「自己」と、食べられる「他者」の関係を、日本近代帝国を構築するジェンダー、階級、人種、エスニシテイの言説に読み取り、(3)その例として、谷崎潤一郎、林芙美子、成瀬巳喜男の文字・視覚言説を考察する。「飽くなき帝国」の歴史を分析することにより、本論は「自己」が「他者」を貪る二項対立関係に依拠しない,生存・共生の物語構築の可能性を模索する。

参考文献:
堀口典子「移動する身体—林芙美子原作、成瀬巳喜男の翻案映画をめぐって」斎藤綾子編『映画と身体/性 日本映画史叢書第6巻』、森話社、2006年、221-266頁.
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