『18歳からの民主主義』 

岩波新書編集部 編 岩波新書 発行
2016年4月 発行


2015年、公職選挙法改正により、選挙権年齢が満18歳以上に引き下げられた。選挙権を持つ年齢が変更になるのは、1945年以来70年ぶりとなる。今回の改正により、選挙権をもつことになった約240万人の若者たち。日本が抱える不都合な事実を知り、18歳も、101歳も、選挙のために必要な知識を得、今日、直面している民主主義の危機を乗り越えるため、自分の意思を社会に生かす。本書は、その道の達人たちによって書かれたガイドブックである。

「民主主義は道具だ」(p.198本文)と上野さんは言う。道具である以上、その使い方を学ぶ必要がある。しかしこれが、簡単ではないな、と感じた。民主主義を身に着けることのむずかしさ。あなたの家庭に、あなたの学校に、地域に、職場に、果たして民主主義を学ぶことのできる機会があるだろうか。「18歳までに、あなたがどんな環境で育ってきたかも問われるのだろう。それを覚えておいてほしい。」(p.201本文)

親が、教育者が、事業者が、つまりは国民が、どんな環境で生きているか、なのだ。決められたことをそのままにしているだけでは学ぶ機会はない。主体となって、ひとり一人が主権者となって、話し合い、話し合い、話し合う。そういえば、国会にもないなあ。

民主主義は、私たち国民にとっての意思にもとづいて政治が行われ、政策が決定・実行されることを意味する。民主主義を盛り返すパワーが重要。しかし待てよ。そもそも、盛り返すオリジンが繰り返し生産されなければ、道具を使える人は育たないということか。鋭いところをやっぱり抉る。痛快だが痛切。

「家族は社会の最小単位。そこに民主主義がなければ、それよりもっと大きな社会に民主主義が拡がることはのぞめない。」胸に応えたあなた。よく切れる上野さんの切なる更なるテキストを紐解いてほしい。

■ 堀 紀美子 ■