監督も知らない、役者も知らない。
ひと足先に試写会で、観て感じたまんまをいけしゃぁしゃぁと映画評。
筆/さそ りさ
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もしも自身がその当事者になってしまったら。
配偶者の介護をしなければならない側、する側に。
そうした思いを重ねながら観ることになった。
あらすじは、若年認知症を患った妻:八重子を12年間にわたって介護した夫:誠吾が「やさしさの心って何?」の演題で、
講演の流れに添って折々を回想するというもの。
認知症を発症した発端は、誠吾ががんで度々入院した時のストレスが原因ではなかったのか。
介護だから、だれにもわかってもらえないような苦労は当然ある。
それを縷々描かれたものなら観る者としては耐えられないだろう。
かといって、日常の大変さ、放り出したくなる心理、周りの言動などを語らずして描けないテーマ。
制作者は、内容を相当に練りこまなければ、ただただ、苦労を吐露する側面だけが浮き彫りになり勝ち。
そのぎりぎりのラインを「やさしさ」と「尊厳」をコンセプトに創りあげた本作である。
昨今、身近なところで、認知症ならずとも配偶者の介護をしている人の生々しい話を聞く機会が増えた。
これはもう社会的な課題であり、当事者だけでは解決しえない事柄が多い。
そうなると、介護「する」「される」だけでなく「している」「した」人に、本作はどのように受け入れられるだろうという思いも湧いてくる。
試写の最中、隣りの席で鼻をすする様子が伺える。他の席でも一人や二人ではなさそうだ。
全体を通して制作者の誠実さが伝わってくる。
その分、素直な気持ちで、「介護する立場」でのあり様をイメージできた。
そうならないでと願いつつも、「当事者になってしまったら」の思いに対するひとつの生き方、考え方の回答を得ることもできた。
2017.3.22試写
2017年5月6日(土)順次公開 名古屋/名演小劇場
2017.03.29 Wed
カテゴリー:マイアクション