近年、がんとストレスの関係は多くの専門家が指摘している。しかし、複雑な社会のなかで生きている私たちにとって、ストレスを感じずに生きるのは不可能に近い。
それだけに、適度なストレスがありながらも、気分よく前向きに過ごせる工夫が必要になってくる。私はどちらかというと、神経過敏ぎみで、相手の態度や感情に必要以上に反応しやすい。以前は、仕事の締め切りに追われて行き詰まっているときには、必ずといっていいほど過敏性大腸炎の症状がでた。
病気を経験してから、日常生活を見直してみると、無自覚なままにストレスをため込む生活習慣を身につけてしまっていた。
例えば、メールのやりとりひとつとっても、イライラする原因となっていた。パソコンは私にとって仕事上の必需品、今や切っても切り離せない関係だが、いつも心のどこかでメールが届いているかどうかを気にしている。
すでにこちらからメールを出していて、返事を待っている場合は、特に気になってしかたがない。ついつい一日に何度も新しいメールが届いていないかチェックをしてしまう…。
当然、相手によってはすぐ返信をくれる人と、そうでない人がいるが、私はすぐに返事をださなければ不誠実な人間に見られはしないかと心配になり、すぐに返事を出していた。
すると、すぐに返信できない状況にあるときなど、できない自分に対してイライラした。
「メールの返事が遅い=仕事のできないひと」と思われるのではないか。自分はダメなヤツだと決めつけられはしないかと不安になった。
しかし、冷静に考えてみれば、急用の場合なら相手は電話をかけてくるはずである。私は、メールの返信をやたら気にする自分をかえるために、メールチェックは朝と夕方、2回に制限した。返信もその日のうちに返せれば、よしとする。
もしそれができなくても、過度に自分を責めたりしない。そうしたささやかなルールを作った。
さらに日常生活のなかでも
「あれも、これもやらなければならない…」
と、しなければ(・・・・・)ならない(・・・・)症候群のような自分をなだめ、
「ここまでできたのだから、OK!」
と褒めてやる。そして、毎日の生活のかなで、できなかったことを並べたてるのではなく、できた自分自身を認めてやるのだ。
自分自身を芯から元気にできるのは私だけ
メールに対しての気負いが少なくなっただけでも、肩の力がずいぶん抜けたように思う。ジョギングなどの運動による効果もあるが、何十年来抱えていたひどい肩こりが消えた。
そして、もうひとつ消えたものがある。がんへの根拠のない恐怖心だ。母が63歳で胃がんになってからは、「もしかしたら自分も…」と心のどこかでいつも怯え、がんという言葉を聞いただけで、異常に過敏に反応していた。
過剰に心配することは取り越し苦労となり、ストレスを増やし身体に悪影響を及ぼすだけで、何の意味もない。
ある程度の年齢になれば誰でも、がんという言葉を聞くだけで不安になるのは多かれ少なかれあるだろう。だが私は「乳がん」を乗り越えてきたではないか…。そう自信を持つことで、かえって病気になる前より、はるかに、がんという病気が怖くなくなってきた。
がんを予防するための生活習慣や食事法を提唱している医学博士の安保徹氏は、複数の著書のなかで、「がんをよせつけない」ためには、がんは決して怖いものではなく、がん細胞はむしろ「弱い細胞」であることを認識すべきであると記している。
弱いもの=がんを恐れる必要はないとする考え方だ。
私の親しい友人のなかにも、胃がん、子宮がん、そして「乳がん」を克服したひとたちがいる。みんな元気で溌剌と生きている! 生きていく間には、がんのひとつやふたつはできてしまうことがあるかもしれない。しかし、生活習慣や栄養面に気をつけていれば、がんを発病する率は格段に低くなる、と理解すればいいのだ。
がんと心の関係に着目している専門家は多いが、そのひとりに長年、「ホリスティック医学」を治療の中心にすえている帯津良一氏がいる。
「ホリスティック医学」とは、臓器や細胞など、からだのいち部分をみることを重要視するあまり、人間を全体的にみることを忘れてしまった、近代の西洋医学に対する反省から、1960年代のアメリカで興った概念だ。人間をまるごと=全体的に見る医学ともいえる。
帯津氏は、以前のエッセイでも紹介した管理栄養士の幕内秀夫氏を、自らの病院の栄養相談担当者として招き、患者さんたちに栄養指導をしてきた。帯津氏は幕内氏との対談書『五十歳からの免疫力と快楽』のなかで、がんの予防は心の持ち方が7割、食べ方が3割であると語っている。
自らの免疫力が強ければ、がん細胞を食いつぶすNK細胞が活発になることは、今では誰もが知っている。私は「乳がん」になったのは、がん細胞を生きながらえさせるほど、自分の免疫力が落ちてしまっていたからなのだ。
しかし、だからといって、自分の弱さを責めても、何のプラスにもならない。問題は自分の意識だけではコントロールできない、この免疫力をどうアップさせるかだ。
私たちの脳は不思議な存在だ。私たちが考えたことによって、脳がからだに指令を出す。自分では気がつかないだけで、常になんらかのシグナルを、からだに発信しているのだ。
それなら、NK細胞を元気づけるようなシグナルを、脳からからだに送ってもらった方がいい。
たとえ「乳がん」を患ったからといって、もともと自分の免疫力が弱いとは限らない。何らかの要素でたまたま細胞が変化してしまい、がん細胞が育ってしまったのだ。私の両親は、私が丈夫に育つことを願ってきたはずである。
私のなかには、長く実りの多い人生を生き抜いていける遺伝子もしっかりとあるに違いないと信じよう。両親の願いが私のなかに生きているはずだと。

筆を持つことが心の支えに…。作品を少しずつ、掲載しています。よろしければ、フェイスブックのページに遊びに来てください。https://www.facebook.com/setsukoshonomichi/
慰安婦
貧困・福祉
DV・性暴力・ハラスメント
非婚・結婚・離婚
セクシュアリティ
くらし・生活
身体・健康
リプロ・ヘルス
脱原発
女性政策
憲法・平和
高齢社会
子育て・教育
性表現
LGBT
最終講義
博士論文
研究助成・公募
アート情報
女性運動・グループ
フェミニストカウンセリング
弁護士
女性センター
セレクトニュース
マスコミが騒がないニュース
女の本屋
ブックトーク
シネマラウンジ
ミニコミ図書館
エッセイ
WAN基金
お助け情報
WANマーケット
女と政治をつなぐ
Worldwide WAN
わいわいWAN
女性学講座
上野研究室
原発ゼロの道
動画






