憲法サバイバル―「憲法・戦争・天皇」をめぐる四つの対談
ちくま新書編集部 編
筑摩書房 発行
2017年4月 発行
目の前に起こることを回避したいと思ったとき、本当はもっと前に、その、起こるべくして起こった事について、思慮しておけばよかったと、時折、悔やむことがある。殊更それが、たくさんの守るべき人たちの命をかけた事柄であるのなら、国境もなく、全世界の人々によって、同様にして守られるものであると、ひとりひとりに還元してみれば望むだろうに、人は、群れることでその選択肢を見誤る大きなエネルギーを生むことがある。一方で生み育て、一方で殺略する人々の歴史は、いまもなお、矛盾を抱えながら世界中で繰り返されている。
1947年に施工された日本国憲法。時代の流れとともに憲法改正への動きがある。本書には、そんな状況の下、「「憲法」と「日本のいま・これから」」をテーマに、さまざまな識者の方の選書によるブックフェアに連動して開催されたトークイベントで語られた4組の対談が収められている。
「戦後の憲法の役割」と題した、佐高信さんの対談のなかで、上野さんは、『あたらしい憲法のはなし』(2001年・童話屋)と、『あたらしい憲法草案のはなし』(2016年・太郎次郎社エディタス)をとりあげ、前者について「これは戦争が終わってようやく平和憲法を手に入れたという、当時の感動が伝わる、本当にいい本です。ちゃんと漢字にルビが振ってあるし、とてもわかりやすい。つくった人たちの熱い思いがこもっていて、子どもにもよくわかるように書かれています。」(本文.p75)と評している。後者は『あたらしい憲法のはなし』の完全なパロディで、自民党憲法改正草案について解説したものだそうだ。
ほかに、『ぜひ「あかりちゃん、ヒゲの隊長に教えてあげてみた」(YouTube)を見てみてください。よくできた動画ですから。』(本文p.76)と上野さん。「これは!」と思い、前述の本は取り寄せ、動画は即検索してみた。
戦後70年に際し「改憲」を思議する。憲法を基盤に、それぞれの思いで日本のこれからを描き出す。ずっと続くこれからに思いを巡らせながら。
■ 堀 紀美子 ■
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