映画「たたかい続ける女たち〜均等法前夜から明日へバトンをつなぐ〜」を鑑賞して  

6月3日(土)、渋谷区のダイバーシティセンターにて山上千恵子監督の新作、「たたかい続ける女たち〜均等法前夜から明日へバトンをつなぐ〜」の試写会が行われました。
私もイラストで一部映画にご協力させていただき、そのご縁でお誘いのメールをいただきましたので、この日をとても楽しみにしておりました。当日は名古屋から会場まで駆けつけ、監督にもご挨拶させていただけてとても嬉しかったです。 

さて、この映画は雇用機会均等法成立を主なテーマとしており、成立までの様々な女性たちの取り組み、そして成立後の女性を取り巻く環境について、当事者のインタビューや貴重な過去の活動の映像を通し、視聴者に問いかけていく内容となっています。

均等法成立に至るまでに、たくさんの女性たちの声がありました。女性だからと言う理由だけで働く権利がさまざまな形で侵害されて来た経緯から、男性ばかりでなく女性も人並みに働ける環境を求め、多くの名もなき女性たちが勇気を出して声を上げたのです。

その取り組みの一つとしてクリスマスイブに行われた労働省までの道のりを走るマラソンのシーンには、女性たちが懸命に、かつ笑顔で、小さな子どもも一緒に走っている姿がありましたが、それを見た私は胸を打たれました。力を合わせて女性たちの未来を良くしていこう、男女ともに生き生きと暮らす事が出来る社会を作り上げていこう、そうした熱い想いと前向きな希望が、走る女性たちの笑顔の中に込められている気がしたからです。

デモや政治活動というと、何やら物騒で恐ろしいイメージがありますが、女性たちが権利と解放を求めて戦ったこのマラソンのシーンからはそんなネガティブな空気はいっさい無く、むしろ清々しさと優しさに満ちていました。こんな前向きで温かい働きかけの仕方があるんだということに驚くとともに、このような優しい表情をする女性たちが、熱い想いを持って連帯していると言う事実に心から感動しました。

そうした、たくさんの女性たちの熱い想いによって受け継がれた均等法のバトンですが、受け取った私たちの世代はその法を活かせているかと言うとそうではなく、未だに女性だからという理由でいわれの無い差別を受けている被害者は後を絶ちません。

均等法自体に問題があるという側面もありますが、妊婦を対象にしたマタニティハラスメントや、契約社員という弱い立場を悪用された女性ならではの貧困問題等、まだまだ女性を取り巻く労働環境は改善されているとは言い難い部分が多くあります。

そして、均等法成立以降の世代として映画の中でインタビューを受けている女性たちは、貧困やマタハラなどさまざまな問題を抱えています。しかし同時にそんな憤りの中で、それらを改善しようともがき、戦っている素晴らしい女性たちばかりです。

社会と戦う女性というと、怖そうだと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、少なくとも映画に出てくる「たたかい続ける女たち」は、愛に満ちあふれ、人に対して強い共感能力と思いやりを持った強さと優しさを兼ね備えた女性ばかりです。彼女たちは皆、自分のために泣き、人のために泣く事のできる素敵な女性たちです。

私は映画に出てくるたくさんの女性たち皆に驚き、感動しました。人任せにして知らんふりを決め込めば楽に違いないのに、あえて、自分が傷つき、自分を晒すことによって、社会のために尽くそうとたたかっている彼女たちの姿が、あまりに美しく、眩しかったからです。

受け取ったバトンはまだまだゴールには届けられていないけれど、私もそのバトンを受け継いで今を生きている女性の一人として、社会をよりよくするために戦い続け、走り続けたいと、映画の女性たちを見て想いを新たにしました。

均等法を巡り、成立のために戦い、成立してからも戦い続けている無数の女たち。歴史的な観点から、そんな女たちの姿を切り取ったこの作品の素晴らしさは改めて述べる必要がないほどですが、女たちの生の声を聞き、その輝きを見て、心に勇気と責任感のともしびを灯す事の出来るこの映画を、今を生き、未来を繋いでゆく一人の人間として本当に鑑賞させていただいてよかったと思いました。また、このような難しいテーマを素晴らしい映画として仕上げてくださった監督の手腕にただただ、驚きと尊敬の念を抱くばかりです。

この映画を一人でも多くの人が鑑賞して、名も無い女性たちの強さと優しさを知り、未来へ託すバトンの重さを感じ取っていただけたらなと思っています。 素敵な映画を鑑賞する機会を、そして、拙作を映画に活かしていただいて、本当にありがとうございました。

また、温かな会場の一体感、鑑賞者一人ひとりの想いを繋ぐインタビューの時間など、心温まる試写会に参加できて幸せでした。 これからも、山上監督の作品と活動を、そして男女が健やかに生きていける社会の実現に向けた活動を応援させていただきたいです。

■ 森智香子 ■  

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