学生を自己調整学習者に育てる:アクティブラー二ングのその先へ

著者:L.B.ニルソン

北大路書房( 2017-07-14 )

 本書は、日々大学生と向き合っている教職員だけでなく、さまざまな組織で研修を設計・実施している方々に、ぜひお読みいただきたいと思っています。原著を知ったのは2年ほど前のことです。読み進めるうちに、これは多くの方々と共有したいと強く思うようになり、翻訳チームを組織し、作業に取り掛かりました。  自己調整学習とは、教育心理学における教育理論体系のひとつです。学習者自身の主体的で自律的な取り組みを学習の鍵として考えます。学習者の認知的側面だけでなく、情動をも包括する理論となっているのが特徴です。  この学習過程に対する能動的関与には3つの要素があります。
 動機づけと学習方略とメタ認知です。これを3段階で学習のPlan-Do-Seeのように回していくのです。自己の調整の先には、チームでやることによる共調整、さらに社会的に共有された調整へと結びついていく理論として、近年注目されています。
 本書は、自分の学んでいる過程を意識し、能動的に関与していけるよう、育てていくところに焦点が当てられています。単なるヒント集ではなく、そこには一貫した理論と多くの研究の裏付けが存在しています。私自身、翻訳作業を進める一方で、自分の担当する講義を、本書をもとに大幅に組み立て直し、日々手ごたえを感じています。
 グローバリゼーションや少子高齢化が急速に進む日本において、人材育成はこれまで以上に重要な役割を担っています。大学教育だけでなく、さまざまな組織の研修において、アクティブラーニングの重要性が認識されてきています。さらにその先へ進んでいくために、自己調整学習について理解を深め、多くの場で実践を繰り返し、学生たちが、そしてわれわれ大人たち自身が、自己調整学習者として育っていくことを願っています。