
2017年度前期、和光GF読書会では2つのテーマで活動しました。以下、テーマ別に活動内容を報告します。
【田中寿美子の足跡をたどる】
1つめは『田中寿美子の足跡:20世紀を駆け抜けたフェミニスト』(井上輝子監修、田中寿美子さんの足跡をたどる会編 2015年 出版:女性会議)の輪読によって、田中寿美子さんの活動を知り、その成果を今日的な課題と結びつけて考えることでした。同書のまえがきに「戦後日本を代表するフェミニストの政治家であり、社会評論家」とあるように、田中さんは社会党初の女性副委員長をつとめるとともに、日本婦人問題懇話会創立者の一人であるなど女性問題の研究や評論など多くの著作を刊行した人です。同書は、田中さんへの厚い敬意をもつ人たちによって、散逸していた田中さんの著作を集め、参議院議員としての発言を収集し、ゆかりの人たちへの聞き書き、さらに手書きのメモまでも発掘して編まれた労作です。巻末の豊富な資料に加えて、没後20年にあたる2015年の命日に開催されたブックトーク&シンポジウム「田中寿美子の足跡に学ぶ~女性と政治のこれまで、これから」の記録集、さらに報告者それぞれが参考資料にあたり、田中さんの人となりや活動を読み解いていきました。そこから読み取れた田中さんは、緻密な調査結果に基づいて論を展開する研究者のような一面もあり、同時に、一般市民の声や実態に重点を置き、市民運動を牽引した活動家でもあるという多様な面を併せ持つ人でした。また田中さんの足跡を通して、国際婦人年世界会議から日本の女性差別撤廃条約批准に至る国会での議論のプロセス、男女雇用機会均等法成立過程への各政党の関与や市民団体の活発な活動の様相を知ることもできました。なかでも男女雇用機会均等法を女性労働者にとっていかに実効性のあるものにするかを重視した田中さんの「第三者機関設置」提案は、今の労働環境改善を考えるのにも有効ではと思われました。そのことは、フェミニストの活動は、時期によって課題の中心は動くとはいえ、先達から受け継がれてきた「財産」があると感じることでもありました。
【性・ジェンダーと表現】
2つめのテーマは、「性・ジェンダーと表現の自由」です。こちらのテーマは、「AV出演強要」が社会問題化し、ウェブ上のCMが「炎上」を繰り返す現状を考えるうえで重要な課題でもあります。読書会の主催者・井上輝子先生から「メディアとジェンダー問題」に関するこれまでの課題についてレクチャーを受け、事前学習の機会を持ちました。そして武蔵野美術大学教授・志田陽子さん(憲法 芸術法)を講師にお迎えし、マンガ・アニメ等の「架空表現」の規制を憲法における表現の自由の観点から考えました。和光大学ジェンダーフォーラム主催の市民講座参加および読書会では講師を囲む研究会を開催し、議論を深めました。日本政府の第7・8回報告に対する国連女性差別撤廃委員会の最終見解では、日本のメディアの固定的な性別役割にもとづく表象と暴力表現に勧告が含まれており、その中でマンガやアニメのあり様にも言及しています。「萌え絵」が公的広報に採用され、技術発展を背景にVRゲームが進化している今、セクシュアル化された(女性)身体の表象を誰もが目にできるのが実情です。「架空表現」と実写、表現される場の課題など、性・ジェンダー表現に関する論点整理は喫緊の課題でもあると考えられます。それには、ジェンダーの視点と表現の自由の観点から社会的な議論の場が必要であると痛感したところでした。
和光GF読書会は、井上輝子先生を中心に、月に3回を基本に活動しています。なかなかハードな日程ながら、それぞれの分野で豊富な経験をもつメンバーならではの意見の違いが興味深く、それらを包み込む先生の場づくりによって活動を継続しています。後期はフィールドワークを含め、新たなテーマに取り掛かる予定です。(和光GF読書会 津田)
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