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猥談―近代社会の下半身―
赤松啓介・上野千鶴子・大月隆寛 著
現代書館 発行
1995年6月 発行
日本の、歴史を背景にした目眩く猥談を、知ってしまった。まさに、近代社会の下半身の成り立ち。そうだったのか、日本人。思いもかけず深みにハマる。決して断定し尽くされない、ここで語られた猥談のすそ野のどこまで行くかわからない拡がりを、目を細めて遠くの方に意識をやることでしか、止められない口惜しさと共に。
「なんとまあ、奥の深いこと」なんて、簡単にいうことさえ憚れる。そんな自分がみっともないと感じてしまう。こんな思いにさせる猥談のなかの真実を、知らなくてもこれまで生きてきたが、知ったこの後が、どう展開していくか、なんて考えるとハマってみるのも悪くないと思う。まだ今はその程度、でもこの先はまた、だれも知らない、すそ野のどこまで行くかわからない拡がりを心のどこかで期待している私がいる。
当代一流・稀代の民俗学者、赤松氏と上野さん、大月氏の3人の学者が集まって、人間の知と性をこれだけのテキストに収めた仕事を存分に味わって、自分の内包されたひだのなかに刻んでみるのはいかがだろうか。それは人生だから、痛みも快もそのどちらも受容する、という意味で。そして、日本近代の「下半身」の変貌ぶりを認識し、男と女、自ら望む性を選び取るために。
■ 堀 紀美子 ■
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