
『その介護離職、お待ちなさい』 樋口恵子著(潮新書 本体759円)
大介護時代、介護離職の現実に注意を促す著書の最新刊です。
介護離職の問題は、30年以上も前「高齢社会をよくする女性の会」発足時からの懸案でした。人生100年時代の今、老々介護が増えて、介護者も要介護者もともに75歳以上が30%を超えました。男性の介護者も史上最高の34%になって、もはや介護イコール女性の問題という時代ではなくなりました。介護離職が少子化の遠因にもなり、今後の日本経済にも悪影響を与える事態だといいます。
超高齢社会のわが国で、老いた家族だけで介護を担いきるのは無理な話なのです。家族だけで介護を担おうとすると、次の世代、つまり現役の子世代が介護を担うことになり、彼等が介護離職を迫られる事態となってしまいます。介護離職ゼロを目指し、本人も家族も地域も企業も、要するに社会を挙げて子育ても介護も担っていくシステムが必要なのです。一方で当事者たちの意識も変えていくことが必須です。
この本では、働く人たちが介護離職に至らないようにするにはどうすればいいか、いかにして仕事と介護の両立を可能にするのか。現実のケースを紹介しながら〈ながら介護〉〈トモニ介護〉(ずばり名付けた【樋口名造語】です)を提示、実践を薦めています。
法律や制度も変わってきました。けれども突然やってくる介護、それをうまく乗り切るには、普段からの情報や知識が必要です。親や配偶者が倒れたとき、どこへ相談するのか分らない人が今でも多いのです。この本では、そういう場合の相談を受けてくれるお役所やグループなども紹介されています。お住いの近くの駆け込み先をチェックしておくといいでしょう。「仕事と介護の両立に声を上げていこう」という著者からのメッセージは、今すぐにも働く人へ、また各職場にも届けたいものです。
著者は多数の団体の代表者ですが、「介護離職のない社会をめざす会」の共同代表でもあります。〈ながら介護〉のための10原則が挙げてありますので、一部をご紹介しましょう。
〇 人生は長い。他にいろんなことをしながら家族を看よう。
〇 仕事を続ける。その覚悟をアピールする。
〇 決して隠さない。
〇 介護は情報戦と知る。
〇 ひとりで抱え込まない。
等々です。
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