今期の活動テーマは「戦中・戦後の庶民の生活を読み解く」です。
 井上輝子・和光大学名誉教授の企画・運営のもとに、輪読、加えて「戦後の生活」の痕跡を辿るフィールドワーク、さらに、読書会メンバーの学習成果報告にもとづいて日本の憲法を考える、など盛りだくさんな内容でした。大いに学び、討論し、歩いた半年でした。



 以下、活動内容を、筆者の感想を交えて報告します。
 まず取り掛かったのが、『銃後史ノート』(女たちの現在(いま)を問う会編 1980~1985インパクト出版会 復刻版)から9篇を取り上げての輪読です。これは昨秋のWANブックトーク「こうして戦争は始まる―孫世代が出会う銃後の女たち」と連動させての企画です。私たちは論考を通して、「自殺ブーム」や「母性」、「紀元二千六百年」、「民法改正」などを切り口に、戦中および戦後初期に、日本の女たちはどう生きたのか、女たちは政治にどう関わり、他方政治は女たちをどう位置付けてきたのかなどを読み解いていきました。
 フィールドワークもまた、読書会の楽しい活動の1つです。今期は銀座近辺で「戦後社会の足跡」をたどりました。今回の企画は、読書会で前年度取り上げた「暮しの手帖」と花森安治の生き方を再確認するためでもありました。事前学習で得た知識をもとに戦時・戦後のまちの様子を思い描きながら歩くことで、まちの変貌ぶりを感じ取ることができました。
(写真はフィールドワークで訪れた 三原橋の路地 (2017年11月 撮影:阿野(和光GF読書会))

そして活動の3つめは、「憲法と女性」。日本の憲法の特徴と、判例の解説をもとに、法とジェンダーについて考える機会をもちました。
 今期の活動を通して、戦争がいかに人びとの生活を破壊するものであるかということを実感しました。特に『銃後史ノート』からはいくつもの発見がありました。なかでも大きな発見だったのは、「家制度」廃止に関わる議論が戦争で頓挫してしまったこと。戦前に活発な議論のあったことは新鮮な驚きであったとともに、戦後の男女平等政策は、決して「与えられたもの」ではないと再確認できました。また全篇を通して感じたのは、「銃後」を担った女たちの、疑問をぶつけずにはいられない悔しさでした。歴史の流れの中で、意図していなかったとしても、女は「銃後」という形で、戦争に加担してしまったという事実。しかし、被害者としてのみならず加害者であることを始点に問を立て、検証した成果として『銃後史ノート』が目に見える形で残っていたからこそ、後につづく私たちは、そこから学ぶことができたといえます。
 ミニコミ『銃後史ノート』を発行し続けた女たちの意志のなんと強いことか。女の手で時代を切り取ったミニコミの持つ力に感じ入りました。書くことで記録を残し、情報発信することの意義はひときわ心に残ったことでした。しかしまた、論考に切り取られた社会のあり様が、現状にそっくりなことに震撼しました。輪読を通して、「銃後」は過去の話しではないのだと思い知ることにもなりました。
 読書会の楽しさの1つに、社会を読み解く枠組みを得られる点があげられます。とくに今期は、先駆者女性の労作によって、大いに示唆を得ました。この楽しさが、読書会に継続して参加する原動力になっているようです。
(写真は、後期活動を終えて懇親会。しょうが料理で温まりました (撮影:筆者))