
© AGAT FILMS & CIE - VELVET FILM - ROHFILM - ARTEMIS PRODUCTIONS - FRANCE 3
監督も知らない、役者も知らない。
ひと足先に試写会で、観て感じたまんまをいけしゃぁしゃぁと映画評。
筆/さそ りさ
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本作は、さまざまの視点を許容するように思える。
マルクスの若い頃の“闘争”をテーマに『共産党宣言』を著す(1848年)までの
生きざまを物語るというのもそのひとつである。
当然、マルクスやエンゲルスの思想や哲学的な論点、論争の背景などは
学問の領域に任せておけばよいわけで、本作は、その役を担うはずもない。
とはいいつつも、産業革命がもたらした“光”と“陰”という視点をもって観ると
19世紀中頃の問題が何も解決されず今日に至っていることを知ることになる。
むしろ、根が深くなった状態で日々の働く環境を悪化せていることに気づくはずだ。
“光”がまぶしく輝けば、その分“陰”は濃くなる。格差は拡がり、産業革命の“光”は、
貧困労働者の増大という濃い“陰”生みだした。
貧困にあえぐ労働者は、人間の尊厳を奪われ、不当な労働を強いられ、
社会のひずみは一人ひとりの希望までも打ち砕く。
マルクスは、企業の利益は、労働者の搾取に因るものではないかと問いかける。
独自の政治批判を展開するマルクス。
そんな彼を排除するドイツ。追われてパリへ。
そこでのエンゲルスとの再会。この、歴史的運命の瞬間を目撃できる。
ふたりの対比とともに、本作は、さまざまな組み合わせでさらなる視点を用意してくれている。
夫と妻、父と息子、理解できる者とそうでない者、理論と感情。
ブルジョワとプロレタリアの対立軸を物語の基本に据えながら。
作品の性格上、論争、闘争のシーンが多い。
マルクス、エンゲルスたちに及ぶはずもないが、いつか過ぎた若い頃が忍ばれてなつかしく思う。
そんなタイミングでボブ・ディランの「ライク・ア・ローリングストーン」が流れ出すではないか。
スクリーンには、20世紀の事件と闘いに身を呈した面々が生き生きと映し出される。
すると訳もなく涙が映像をぼかしてしまう。はてさて、おだやかな論争をしたくなった。
…………そんな困った作品である。
2018.3.16試写/C
2018年4月28日(土)岩波ホール、ほか順次公開

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