非正規・単身・アラフォー女性 「失われた世代」の絶望と希望 (光文社新書)

著者:雨宮処凛

光文社( 2018-05-16 )


 本書は、『「見えない女性」女性たち』と題された新聞記事(朝日新聞2016年11月7日付朝刊)を目にしたことからスタートしました。 そこには、雨宮さんが賃貸物件の入居審査に落ちたことが書かれていて、「収入が不安定な独身中年女性は、部屋を借りることもままならない」という、雨宮さんが遭遇した厳しい現実に驚きを隠せませんでした。

 この記事を読んでいる方にも、「非正規・単身・アラフォー女性」は身近に多くいらっしゃるのではないでしょうか。

本書では、「派遣社員として数々の理不尽にあってきた女性」「ガンが発覚した途端に『雇い止め』にあった女性」「237社を渡り歩き、『スーパー派遣』と呼ばれるまでになった女性」「婚活に邁進する女性」「元メンヘラの女性」「『親の介護』問題に直面した女性」など、切実な問題を抱える現代アラフォー女性が登場し、貴重な生の声が綴られています。

 本書から浮かび上がってくるのは、「日本では、女性が一人でも無理なく生きていくモデルが全く確立されていない」という現実です。

 巻末には、ライターの栗田隆子さんとの対談も収録されています。
 栗田さんは、大阪大学大学院を中退後、官公庁の非常勤職員や派遣社員などの非正規で働いてきた方です。その一方で、不安定な就労の実態や若年層の労働問題について当事者から声を上げるということを目的に発行されたミニコミ誌『フリーターズフリー』の発行責任者を務め、「女性と貧困ネットワーク」や「働く女性の全国センター」などでも活動されてきました。いわば、現在の単身アラフォー女性が直面しているあらゆる問題を先取りしてきたといえます。

 日本政府の独身女性を見るまなざし、日本が抱える社会制度の欠陥、女性だけの実験的なシェアハウス「乙女ハウス」に住んでいたときの話、等々、単身女性がこれからの時代を生き抜くためのヒントが詰まっています。

 ぜひ、お手に取ってみてください。