#MeToo革命が始まった
韓国、#MeToo運動や支持運動の拡散で変化が始まった

<変化は進行中であり、私たちは止まらない。女たちが沈黙するしかなかった世の中は終わった。ジェンダー平等は時代の要求だ。(中略) 私たちは勇気ある証言者と共に行動し、韓国社会を変えると 宣言する。#Me Tooを続け、私たちは勝利する。> 「#MeToo運動と共にする市民行動」

2018年5月17日、韓国のある日刊新聞の1面広告に上記のように書かれた宣言が載せられた。「#MeToo運動と共にする一万人市民宣言」だ。同じ日の新聞7面の全面広告には宣言に参加した人々の名前がびっしり書き込まれた。
#MeToo運動が世界的に広がりをみせている中、今年の1月末、韓国では、現職女性検事が実名で、検察内部のセクハラを告発した。その後、#MeToo運動は大きく盛り上がった。ノーベル文学賞の候補として取り上げられていた小説家のセクハラを告発した詩人、次期有力大統領候補である政治家の性暴力を告発した秘書、有名な監督と俳優の性暴力を暴露した女優など、文化界・学界・政界で社会的に大きな影響力と高い認知度を持つ加害者の性暴力を証言する女たちの告発が続いた。
実は、女たちの勇気ある告発は、2016年江南駅女性殺人事件*以降、高揚した女性運動の熱気の中で、絶えず継けられていた。女たちは韓国社会のミソジニーについて話しながら日常で体験してきた性暴力と差別の経験に対して打ち明けた。SNSでは「#○○界の性暴力ハッシュタグ運動」を展開した。出版界・映画界・進歩的な社会運動界、芸術界などで起きた性暴力の被害事実を公開し、蔓延した加害の実態を知らせた。
しかし、実名を公表し性暴力を告発した被害者の女たちは、そのほとんどが、名誉毀損および侮辱などの報復訴訟に苦しめられることになった。被害者たちは、加害者により、誣告罪(虚偽告訴罪)や名誉毀損罪として告訴され、長い間裁判を受けることになったが、その過程で被害事実を繰り返し陳述するしかなく結局、二次被害を与えられた。このような流れを見て、告発や被害届を出すことを躊躇するようになった女性が出てきた。女性運動家たちは、現在の韓国の刑法では、#MeToo運動の告発内容が事実であっても加害者に対する事実摘示による誉毀損罪が成立するため、被害者の告白を萎縮させてしまうと強く批判した。
今年の3月15日、「#MeToo運動と共にする市民行動」(以下、「市民行動」)は#MeToo運動に対する強力な支持と連帯を掲げてスタートした。#MeToo運動に対するバックラッシュに対しすぐに対応できる機構の必要性に共感し、性差別的な社会構造と文化を根本的に変えることを目標にした。「市民行動」は被害者に向けられた疑いの視線、非難、誹謗に厳しく対応しながら、被害者の人権を守ること、被害者の告発を妨害してきたすべての制度的・文化的な制約を除き、加害者を処罰すること、真相究明を促すことなどを行動の目標とした。スタート当時は、女性団体と市民団体337個と161人の市民が集まったが、「#MeToo運動と共にする一万人市民宣言」を進めていたら参加者が多く増えた。
「市民行動」は、スタート直後の3月23日、夜の気温が1~2度に下がった寒い天気の中、「2,018分のスピーチ大会」を行った。大会名の「2018分」には2018年をジェンダー平等の元年と定めようという意味をこめた。2,018分間(約33時間)、集会を開くことになったが、参加者の女たちは夜を明かして自由発言を続けた。翌月の4月21日にはソウルだけでなく光州・全州・大邱・金海・浦項など地域の市民も#MeToo運動を支持するということで「性差別・性暴力を終わらせる集会」を開いた。
また、今年の5月17日江南駅殺人事件の二周忌追悼会には、豪雨にもかかわらず、数千名の女たちが集まり「これ以上女を殺すな」と叫びながら集会を開いた。追悼集会で「市民行動」は、「家父長社会は女を黙らせようとしているが、そんな世の中はもう終わった」と宣言した。
引き続き、今月の5月には、10代後半から20代半ばまでの女性1万2千人が集まって性暴力事件、盗撮事件における性差別的な捜査を糾弾する大規模デモ「性差別捜査をしている検察・警察糾弾デモ」***を2回も行った。関連した集会では最大規模であるが、ツイッターとインターネット・コミュニティなどで知り合った若いフェミニストたちが自発的にデモを企画し、参加した。女たちは、隠し撮り動画や写真を作って流出した多数の事件でその加害者は男性であるのに、男性が加害者の場合は、処罰しないか寛大な処罰を受けることに比べ、女性が加害者の場合は、警察が直ちに捜査を始め犯人を捕まり、(男性が犯人である場合と違って)メディアに犯人の女性を公開するなど、韓国の警察が行ってきた不公正な捜査慣行について問題を提起した。 集会で女たちは「男だけ国民か。女も国民だ」、「男性であることが特権か」、「有ジョッ無罪、無ジョッ有罪**」と怒りに満ちたシュピレフコールを繰り返し、性差別的な捜査を行った警察庁長や検察総長は辞退しろ」と警察や検察の責任を取るよう求め、署名運動も展開した。一方、最近、開いている女たちの集会には、参加者の女たちに塩酸テロや硫酸テロをするとネットで匿名の公開脅迫が続いているが、女たちはこの脅威に屈しないで、デモに参加している。
このような女たちの努力があって、5月末、韓国検察庁は、性暴力の虚偽告訴罪の事件において、性暴力が行使されたのかその有無を明確に判断するまで、虚偽告訴罪に関する捜査を始めないという内容を取り入れ、性暴力捜査マニュアルを改正した。また、性暴力の被害事実の公開による事実摘示名誉毀損の場合、違法性を消滅させることを検討すると検察に指示した。
「市民行動」は、今後#MeToo運動から出たさまざまな証言、対応方法を集めた白書を発刊する作業、#MeToo運動に対する政府対策の実効性を確認するモニタリングを実施し報告書を出す計画である。
(金ディオンWAN特派員)

*江南(カンナム)駅女性殺人事件: 2016年5月17日ソウル都心江南駅の近くの男女共用トイレで23歳の女性がトイレに隠れていた面識のない男性によって刃物で殺害された事件。逮捕された男性は殺害動機について「普段女から無視にきたので我慢できなかった」と述べていた。この事件をミソジニーに基づいた犯罪と考えた数千名の女たちは、殺された女性を追悼しながら、自分たちが人生で経験してきた性差別・性暴力について告発するポストイットのメモを江南駅の出口に貼ったり、集会を開いたりしていた。このような女たちの自発的な動きは韓国社会の構造的な性差別、広まっているミソジニーの問題を提起することにつながり、以降、とても活発になった女性運動に大きな起爆剤になった。
**有ジョッ無罪、無ジョッ有罪:1988年韓国では、多くない現金を盗んだ窃盗罪のため、何と17年の懲役の重刑を服役していた窃盗犯が刑務所から脱走した事件が起きた。脱走犯は警察に追われ、包囲されることになると、不公平な刑罰に抗議するという意味で「有銭無罪無銭有罪」と叫んで自殺した。この事件の言葉を借りて、最近の若い韓国のフェミニストのネットコミュニティでは「有ジョッ無罪、無ジョッ有罪」という言葉が使っている。ジョッは男性の性器を意味する俗語。
***性差別捜査をしている検察・警察糾弾デモ:最近の集会の中で、一番多く報道された。韓国国内メディアの報道URLは、下記。
https://www.youtube.com/watch?v=xmqe9MMvDRo
https://www.youtube.com/watch?v=7Qj6NBj_BHc
https://www.youtube.com/watch?v=tpjviznet-c
https://www.youtube.com/watch?v=8wTR1z_2THI

写真提供:#MeToo運動と共にする市民行動