
「水田宗子さんを支援する会」は、これまで城西問題の経緯を皆様にお伝えしてまいりましたが、先月5月31日、学校法人城西大学は記者会見を行い、一年にわたって調査を行った「会計調査委員会」の最終報告を発表しました。そこで水田宗子前理事長が理事会の決議を経ずに、5億円相当の不適切な支出を行ったとする内容の発表が行われました。
学校法人城西大学が指摘する「不適切」な支出・手続きについては、その解釈をめぐり疑義が呈されています。また、調査委員会の調査方法についても公平性に欠けるなどの点が指摘されています。これらについては、水田宗子さんの代理人による反論があり、現在係争中の裁判で、今後明らかにされていく見込みです。
先日の5月31日の学校法人城西大学の記者会見に対して、水田宗子さんが反論コメントを発表しましたので、ここに掲載致します。私立大学で起きている元文科省官僚による統治の実態を少しでも多くの方に知っていただきたく、引き続きご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
■水田宗子代理人弁護士の反論
■学校法人城西大学が設置した「会計調査委員会」の調査等に対する疑義はこちらをごらんください。
■水田宗子前理事長の見解
城西問題の解決を訴える
――小野元之氏の欺瞞と大学の私物化――
2018年6月25日
学校法人城西大学 前理事長
水 田 宗 子
1 会計調査委員会の最終報告について
5月31日、学校法人城西大学は、会計調査委員会の最終報告書の受領を公表し、新たなに1億円を超える不適切支出が明らかになった旨を発表しました。
私は、昨年4月19日、会計調査委員会が設置された当時、同法人の理事でした。設置の発表に先立つ2月、3月の理事会では、会計調査委員会の設置や文科省における会見など一切議論されたことがなかったので、私は報道に驚きました。
私は、同委員会に対して、その設置手続の瑕疵、委員や事務局の人選の不透明さ・不公平さについて意見し、説明を求めてきましたが、残念ながら、同委員会はその点について回答することから逃げ続け、現在に至ります。
同委員会は、昨年9月の中間報告及び今回の最終報告いずれにおいても、退職金等の支払いについて必要な理事会決議を欠いているという理由で「不適切な支出」と結論づけています。学校法人城西大学の公表内容を聞く多くの人は、理事長である私が必要な決議をとらずに勝手に退職金額等を定めて支給していたと誤解するでしょう。
しかし、それは全く事実と異なります。同委員会が問題とする退職金等の支給について常務会(または常務理事会)の決議を経ていました。退職金等の支給とその額の決定について理事会から包括的に委任された常務会(または常務理事会)の決議で足りるとするのが学校法人の城西大学の規程の内容だったのです。
常務会(または常務理事会)に包括的に委任することは許されず、個別具体的な退職金等の支給決定に理事会決議が必要であるとするのは委員会の独自の見解です。法律上必ずしも必要とされない理事会決議が必要であるという独自の見解まで披露し、不適切会計との結論を出したのです。
報告書では「理事会決議」が非常に強調されていますが、そもそも会計調査委員会の設置について理事会決議が存在しません。その存立の基礎を支える正当性すら欠けた委員会なのです。それだけでなく、ヒアリングの過程において、委員会の人選、調査方法の客観性・公平性などについて私から具体的に疑義を指摘されながら、4人の委員誰一人として誠実な回答をしなかったことに、同委員会の本質を見ることができます。その事実認定、法令・規則の解釈の客観性・公平性に疑義があることは明白です。
小野元之理事(以下「小野理事」といいます。)及び学校法人城西大学は、私との裁判において、会計調査委員会の中間報告書及び最終報告書を自らの主張を根拠づける証拠として提出しています。いずれ、その恣意的な法令解釈と事実認定が不適切なものであることが裁判において明らかになります。
小野理事は、私の経営が「デタラメ経営」であると新聞紙上で威勢よく非難をされていましたが、解任当時はもちろん借金はなく、資産1200億円・流動資金490億であり、収益は年間14~20億円でした。これまで一度も給与、ボーナスの遅配もありません。給与も他の私立大学と比較しても適切に決められていました。役員に関しても同様です。
現に小野理事も同理事の後輩で文科省OBの北村幸久氏(現在法人局長)も約1800万円、約1500万円という高額報酬を受領していました。
つまり、学校法人城西大学は、小野理事が高額の理事報酬を得られるだけのよい経営状態を維持していました。私を解任した後も、現在の理事会は、私が全学的委員会を設置して2011年に設定し、実行した第一次5カ年中期目標・計画、それを引き継ぎ発展させた2016年に策定した第2次5か年目標・計画をほとんど変更していません。小野理事自身がその策定・実行のプロセスに参加し、賛成しているのですから当然です。
私の経営が「デタラメ経営」なのであれば、この計画こそ、その元凶のはずです。それを変更していないという事実だけでも、小野理事による「デタラメ経営」なる非難が内容空虚な言葉遊びに過ぎないことはお分かりいただけると思います。
小野理事やその強い意向を受けて設置され、小野氏と個人的な関係の深い委員によって構成された会計調査委員会の報告書は印象操作としては十分に機能したと思いますが、いずれも裁判において覆されるものです。残念ながら今しばらく時間を要しますが、一つ一つ勝訴判決を重ねていきたいと思います。
なお、現理事長の上原明氏(以下「上原氏」といいます。)は、コンプライアンスの徹底を謳いながら、今回の記者会見にさえ自ら臨まず、「理事長特別補佐」の小野理事に委ねる無責任な姿勢で徹底しています。
上原氏は、小野理事の行ってきた違法ないし不適切な行為を一切不問に付すばかりか、会計調査委員会が理事会で一切議論されないまま設置された重大な瑕疵についても説明していません。上原氏にコンプライアンスを語る資格はないと思います。
残念ながら現在の学校法人城西大学に小野理事(理事長特別補佐)の行った行為を問題とする自浄能力は期待できないので、私は、小野理事の行為を検証対象とする第三者委員会の設置をはじめ、次に述べる城西問題について徹底的な検証を求めていくつもりです。
2 城西問題の本質
いわゆる森友問題や加計問題は、「政治が行政を歪めた」という視点から取り上げられてきました。その言葉になぞらえれば、学校法人城西大学では、「文科省のOBが大学の自治を歪めた」ということができます。この問題の本質が不適切会計などという作り出された不祥事にあるのではなく、元文部科学省事務次官である小野理事が、当時行われていた学校運営調査があくまで任意調査であることを知りながら、文科省が学校法人城西大学に厳しい目を向けている、このままでは補助金が削減される、最悪の場合には法人が解散されるなどと、法律上あり得ない危機感を煽りました。
そして、そこに何ら回避すべき危機がないにも関わらず、理事長である私を解任しなければ学校法人の危機であるとして、緊急動議という違法な手段を講じました。それだけではありません。小野理事は、寄附行為に定められた手続によらず自ら理事長代理を称し、事実上理事長として10か月以上、学校法人城西大学に君臨しました。
寄附行為は私立大学のいわば憲法です。元文科省事務次官であり、私立学校法の解説書の著者でもある人物が、寄附行為の規定には従わず、私の解任に賛成した理事らの多数決で理事長代理と称し続けたのです。
これは、元文部科学事務次官による私立学校の根本規範の破壊行為です。学校法人城西大学の寄附行為は、多数決を濫用するかかる人物が出てくることを想定し、理事長代理はあらかじめ定められた者が就任する旨を明記していました。
当然のことながら、学校法人城西大学の長い歴史において、寄附行為を無視し、多数決で理事長代理になった者は存在しません。小野理事の行為は、学校法人城西大学の根本規範(寄附行為)に対する冒涜であり、会計調査委員会の言葉を借りれば、明らかに遵法意識・倫理観が欠如する不適切な行為です。
また、小野理事は緊急動議の違法の問題を覆い隠すため、「不適切」会計の問題に焦点を当て印象操作を繰り返す一方、あれだけ強調していた「文科省の意向」について、昨年の2月に天下り問題が世間で騒がれ始めた時期を契機に突如として口をつぐむようになっております。
小野理事が私の経営では数年後には法人経営が破綻すると思うのであれば、それを理事会に上程し、正々堂々と私の経営方針について問題提起し、必要だと思うのであれば、寄附行為に規定に従って私の解任決議を提出すれば足りることです。しかし、彼がしたのはアンフェアな不意打ちである緊急動議です。百歩譲ってそれが認められるとしても、それは、文字通り「緊急性」があった場合に限られるはずです。
小野理事は当時それを「文科省の調査と意向」に求め、自らの主張の正当性を根拠づけていましたが、解任が一旦成功するや文科省の意向に一切言及しなくなり、これまで、小野理事からその緊急性の存在、文科省の意向なりが証明されたことがありません。それどころか、補助金カットだ、大学の解散の危機だと騒いだ文科省の任意調査の結果を公表すらしていません。あまりに自らの言動に無責任かつ卑怯で姑息な態度だと憤りを感じます。
学校運営調査はあくまで「任意」の調査です。その調査の過程において、文科省が私立大学に対する補助金の削減・停止をちらつかせ、その意向を私立大学に及ぼそうとしたのであれば、権力の濫用であり、大学の自治を揺るがす大問題です。
当時、小野理事は文科省の意向に明確に言及し、緊急動議という違法な手段を講じて私立大学の理事長を解任し、自らが事実上理事長の座につきました。
任意調査における文科省の意向を理由に私立大学の理事長の解任をするなど、私立学校法が尊重する私立学校の自主性を踏みにじり、大学の自治を侵害するものです。
信じがたいことですが、文科省元事務次官という経歴を有し文部科学行政に通じた小野理事が、出身母体である文科省による任意調査を利用してこれを実現したのです。元文科省事務次官による大学の自治の破壊、これこそが学校法人城西大学で起こっている問題の本質です。
これは一私立大学の問題ではなく、まさに全私立大学の自治の問題であることを多くの私立大学関係者にぜひ知っていただきたい。私が闘い続ける理由の一つはここにあります。
小野理事の都合で設置された会計調査委員会が小野理事に都合のよい「不適切会計」との結論を出し、今や、問題の本質がすり替えられようとしています。
同委員会の最終報告を受け、私は、文科省の調査を利用した文科省元事務次官による私立大学理事長の追い落としこそが、この問題の本質であることを改めて強調したいと思います。
学校法人城西大学の元監事、私の解任に反対した元理事など、小野理事のやり方に反対した方々は大学に対する貢献者でありながら、大学を追われました。その後、私が大学を私物化したと批判する小野理事は、自らが理事長を務める学校経理研究会の元副理事長(現在顧問)、旧知の元総務省事務次官、自らが評議員を務める東北大学の総長経験者、京都大学法学部の同窓である元裁判官を次々に法人の役員(理事、監事)に迎えました。さらに、自らが理事長を務めるパナソニック財団の元事務局長を総務部長として迎えています。
そして、理事長になるつもりはないと述べながら、理事長代理と称して10か月もの間、理事長同然に振舞った後、理事長「代理」から理事長「特別補佐」へとなりました。
ありもしない緊急性を元文科省事務次官が「文科省の意向」という言葉で生み出し、1年もたたず、学校法人の理事・監事ポスト等を自らの旧知の人物の再就職先としてしまいました。
身近な友人や部下で理事、監事、事務局管理職を固めただけでありません。私の解任に反対した理事、監事を退任させ、私を支援する教職員を排除し、さらには私を始め排除された教員の元で勉強、研究していた学生たちまでも排除してしまいました。こんな強権発動は決して許されてはならないと思います。
創立者の娘が学校を私物化したといえば、事実とは無関係に多くの人がイメージを膨らませるであろうことは想像できますが、私は、小野氏のような私的な関係で人事を決めたことは一切ありませんし、私の意見に反対するという理由で人を排除したこともありません。
以上のとおり、小野氏のいう「デタラメ経営」も「学校の私物化」も印象操作のための発言であり、そこに具体的な中身などないのです。
このような人物を理事に推薦した私自身の責任を感じています。事が私自身の解任だけであれば、私の自業自得かもしれません。自らの経営について反省する点もあります。
しかし、前述のとおり、私立大学の経営に携わったこともなく、創立者の精神を体現すると思えない人物らが元文科事務次官の知り合いであるというだけで次々と理事・監事となり、学校法人城西大学が私立大学としての自主性を失おうとしている事態を私は見過ごすことはできません。
小野理事の行為が私立大学の自治を揺るがす由々しき事態であることを明らかにし、学校法人城西大学の正常化に努めて参ります。
当時、仮に文科省に小野理事が言われるような(私を解任させる)意向があり、それを小野理事に伝えていたというのであれば、任意調査の名を借りた権力の濫用であり、文科省の責任も追及していく所存です。
私は大室俊三弁護士から力強い援護を受けており、今後の裁判に一切不安を感じていません。しかしながら、私の究極的な目的は、裁判に勝つことにとどまらず、小野理事によって歪められた学校法人城西大学の自治を取り戻すことです。もちろん、そのための具体的な構想も持っています。今後、協力者の方々のご協力を得て実現して参ります。
小野元之理事長特別補佐による記者会見を受け、以上のとおり私の意思を改めて皆様にお伝えいたします。
以上
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