どこで、誰と、どう暮らす?: 40代から準備する共生の住まいづくり

著者:近山 恵子

彩流社( 2018-04-24 )


『どこで、誰と、どう暮らす?』は20代からの友人3人の共著。  ~ウーマンリブから、高齢者住宅、地方創生の拠点づくりへ~    
         
 私は現在66歳です。一昨年母と共にサービス付き高齢者向け住宅である「ゆいま~る那須」に移住しました。昨年母を看取り、この春から「那須まちづくり広場」に毎日通う生活をしています。「ゆいま~る那須」にはこの本の共著者である近山恵子さん、佐々木敏子さんも住んでおり、「那須まちづくり広場」は廃校となった小学校をリニューアル、“つながる&ひろがる”を合言葉に人・仕事・文化の交流拠点を目指して、今年4月27日にオープンした地方創生の小さな拠点、ここにも3人がともに関わっています。
 この本には、ここに至る3人が20代に東京・新宿にあった「ホーキ星」という女性の居場所で出会い、長年都会暮らしをしていながら、何故、那須での田舎暮らしを選択したのか、生き方暮らし方が書かれています。
 共著者である近山恵子さん、佐々木敏子さんと私は1970年代、ウーマンリブ運動の中で出会い、人生の大先輩である小西綾さんと駒尺喜美さんの自宅に通い、新聞を読んだり、自分史を書いたりしました。そのことで世界の出来事と個人生活が深い関係にあることを知り、仲間の体験に耳を傾け続けることで、相手のことを、さらには自分のことをも理解し、他者を受け入れ、連携することを学びました。
編集者の出口綾子さんはその1970年代に生まれ、現在母親の介護をし、将来に不安を抱えていることもあり、友人同士が高齢者住宅に住んでいることや、3人の暮らしの選択がウーマンリブ運動から始まることに興味津々となりました。
 私たち3人と編集者・出口さんを交えて、現在・過去・未来という時間軸で語ることで、40年前のウーマンリブ運動での出会いから「ゆいま~る那須」に暮らすことになる意味を改めて考えました。最後まで自分らしく豊かに暮らすとは、自由で対等な暮らしとは、を改めて考えることになりました。
 私は東京都出身ですが、就職を機に両親と弟の住む家を出て友人と共同生活を始めました。その後、居心地の良い場所を求めて女性の居場所を見つけ、女性たちの居場所づくりに関わり、小西さん、駒尺さんと出会うことができました。お二人の暮らし方、生き方はまさに「友だち家族」そのもので、私の知る血縁の家族とは全く違うものでした。人間として、尊重し合い生活する姿を見せていただきました。
 40歳を前に私は、既に離婚して一人暮らしをしていた母と共同生活を始めますが、小西さん、駒尺さんとともに学び、遊んでもらった日々があったからこそ母とも出会い直すことができたのだと思います。母は第一回目の生活コーディネーター養成講座を受講し、60歳を超えて正社員の仕事を得ることができました。生活コーディネーターは高齢者住宅に必要な仕事であり、女性の自立支援のために創出された職業です。
 母は洋裁の技術があったのですが、父が勤める店の仕事を自宅で内職しており、長い間我慢をし、離婚できずにいました。近山さんのお母さんは看護師という専門職を持っていたため、夫の暴力や女性関係がもとで家を出てからも経済的自立ができていました。彼女はその姿を見ていたので、女の自立には経済力が欠かせないということを子どもの頃から身に染みて感じていたといいます。「環境によって人はつくられる」と小西さんは繰り返し言っておられました。そして違いを認めあったうえで互いの橋を架けることの大事さも繰り返し教えていただきました。
 私たちには、小西綾さんや駒尺喜美さんたちから教わり受け継いだウーマンリブの思想が土台にあります。だからこそ、このことを次世代に語り継ぎたいと思い、この本を書きました。小西さんと駒尺さんには具体的にわかりやすい言葉で、実践的なことを教えていただきました。
 私たちもこの本で、実践につながるような具体的な話をたくさん書いています。そのうちの一つに「生活設計を書いてみる」ことがあります。暮らし方、家族や友人、仕事、経済、健康、趣味などがタテ軸、50歳代から100歳代までが横軸の生活設計を書いてみますと、自分の現実を知り、新しい暮らし方を考える機会となります。漠然とした不安をちゃんと見つめ、希望する暮らしを具体的に想像してみる。その過程で、生きるためには人とつながり、シェアしていくことが必要だということもわかってきます。さらにそれを実現していくには、社会の仕組みを変えていくこと、つまり政治にも、地域から関わっていかねばならないことも見えてきました。
 この本を手に取られるとともに、ぜひ「ゆいま~る那須」、「那須まちづくり広場」も体験していただきたいと思います。生きにくいと思える今日、この本が最後まで自分らしく生きるための社会を創出する手掛かりとなれば、ありがたいと思っています。                             (著者 櫛引順子)