2018年8月22日(水)、札幌エルプラザ公共施設にて、#MeTooさっぽろミーティングVol.2

「学ぼう!話そう!セクシュアル・ハラスメント」を開催しました!


当日は、札幌市内外から学生や子ども連れなど、10代~60代のジェンダーも多様な約30名が参加しました。



■ 開催経緯・企画趣旨

今年3月に開催した「国際女性デー#MeTooさっぽろ緊急ミーティング」(https://wan.or.jp/article/show/7782)では、性被害者に対する批判の問題点について学び、性被害者が孤立せず、声をあげた人が守られるような社会を実現するために一人ひとりに何ができるか、意見交換を行いました。

一方で、度重なる「セクハラ問題」報道にも示されるように、日本では性差別的な価値観や人権意識の欠如、組織構造や慣習などを背景に性暴力・セクハラの深刻な問題が発生しています。

本企画は、セクシュアル・ハラスメント問題の実状やその要因などを学び、セクハラの防止や対応、被害者支援として、どのような仕組みや取り組みが必要かを考え、#MeTooの動きを応援することを目的として開催しました。



■ テーマトーク「セクシュアル・ハラスメントとはどのような問題か?」

テーマトークでは、講師としてキャンパス・セクシュアル・ハラスメント全国ネットワーク北海道ブロックの辻智子氏、大國充彦氏より「被害者が責められるのはなぜ?」「権力の使い方・使われ方」といったテーマについて、具体的な事例もふまえお話をいただきました。
 

◆辻氏のお話(主催者要約)

・1990年代に「女性の夜道の一人歩きは危ない」と啓発していた駅のポスターが、現在では「痴漢は犯罪です」となったことに示されるように、性暴力・セクハラが被害者側の自己責任ではなく、加害者側に非がある問題であること、また当事者間だけにとどまらない組織の環境や社会の問題であると認識されるようになってきた。

・セクハラは、知人や職場など信頼関係を前提とした中で生じるために「人間不信」といった意味でも被害者のダメージも大きく、周囲の理解も得にくい。また、レイプと同様に被害者が責められる二次被害も深刻であり、医師や警察、裁判官など被害者の支援や人権を守るべき立場にある専門家の間でも、「セクハラ神話」や「レイプ神話」と言われるような先入観や固定観念が根強いという問題がある。

・1990年代の裁判をきっかけに拡がった被害者支援の運動の結果、「性暴力にあった時の対応は、人によって、状況によって異なる」という基本的な認識が判決としても示され、雇用機会均等法改正(1999年)やDV防止法制定(2001年)を後押しした。


◆大國氏のお話(主催者要約)

・そもそも「ハラスメントharassment」という言葉は、猟犬に追われた獲物が感じるような死の切迫感といった絶望的な意味を持つ言葉に由来があるとされており、「嫌がらせ」という日本語訳のニュアンスからは大きくかけ離れた「重み」のある言葉である。

・社会では仕事をする上でも一定の権力(権限行使)は必要である。しかし、上下・従属のある社会関係や集団組織の内部において、権力を持つ者(例えば教師)が、許された・適切な範囲を超えて権力を濫用し、立場の弱い者(例えば学生)が、自ら本来持っている権利(例えば学習権)を優先するために別の権利(例えば性的自己決定権)を放棄せざるを得なくなった場合に、ハラスメントという人権侵害が発生する。

・つい最近も、官庁や大学、スポーツ界などのハラスメント問題の報道が続出するなど、日本では未だに、権力をもつ者の権力濫用が社会的に容認され、常識とされている状況がある。一方で、情報社会の中でハラスメントが問題として報道されるようになった点では昔より変わってきたところもある。普段の、日常での権力の使い方から見直す必要がある。


◆参加者からの質問を受けた会場内での議論(主催者要約)

・個人や少数では、立ち向かった場合に二次被害などによる疲弊が大きいため、被害者が諦めてしまうことも多い。権力や利益を基盤にして加害者を擁護するネットワークは強い一方、被害者を守り、助けるためのマンパワーや周囲の理解は不足している。

・人の入れ替わりが少なく、第三者の公平な目が入りにくい集団や組織では、問題が常態化し、風穴も開けにくい。個人をとり囲む複雑な人間関係の問題、環境、集団、組織を変えることが大事である。

・組織の中でハラスメント被害に対抗する際には、仲間にする人の人選に注意する必要がある。できれば第三者や専門機関に入ってもらい、まずは自分の身を守って戦う準備に徹する。

・加害者側の意識や態度は変わらない傾向がある。やはり証拠を押さえることが重要ではないか。



■グループトーク「セクシュアル・ハラスメントを防ぐには?起きたらどうする?」

後半は参加者同士で、セクハラの防止策や対応・支援策としてどのような仕組みや取組みがあったらいいか、「ヒューマンエラー」という考え方(人間は完璧ではないと仮定して、仕組みや環境を見直し、問題を改善していくという発想とその段階別対策)もヒントにしながらグループでの意見交換と参加者全体での話し合いの共有を行いました。


◆参加者からの意見(一部要約)

・教育が大事。国会議員の女性比率がやはり少ない。もっと世界を見る。コンビニの成人雑誌を無くすところから。相談機関の設置。行政は対応大丈夫なの?大学の人選大事・セクハラ等についてのポスターだけでも抑止力に。性教育がそもそもなっていない。

・前に出る!言うべき時はいう!それが反セクハラの空気や雰囲気、姿勢を見せる一歩じゃないか!

・アクションを取ろう!頼るとこには頼ろう!意思決定機関に女性を増やすべき!


   
■以下、参加者アンケートより一部抜粋。

①イベントに参加しようと思った理由

・セクハラ、パワハラは身近なところにあるから。
・セクハラに限らずハラスメントの構造に関心がある。
・大学のハラスメントについて知りたかったから。
・これから社会人として働くにあたってハラスメントについて深く考え学びたいと思った。
・卒業論文でMeToo運動について研究しており、この運動や背景についてより深く理解したいと思ったから。
・先生方が講師をされるため。
・職場環境を考える機会だと思った。
・人権問題に興味があるため、どのような対応をすべきなのか考えたいので。
・ハラスメントが起こる環境を知りたかった。環境が変わればそうならないように防止策がとれると思ったから。
・職場でパワハラを受けているため。また日本の性教育に非常に懸念しているため。
・セクハラのない社会を作りたい。


②感想

・教育機関でのセクハラは2つの人権のどちらかを犠牲にしているという話にそういう視点で考えるのかと新しい視点が生まれてとても有意義な時間を過ごせました。
・ハラスメントについて考えるとても良い機会になりました。今日話し合った事を胸に生活を送って行きたい。
・普段は学生の意見しか聞く機会がなかったので今回は様々な立場の人の意見を聞けて勉強になった。講義も実りあるものばかりであった。私も何か力になれるようまずは卒論を仕上げたいと思う。ありがとうございました。
・初めて参加させて頂きましたが、まわりのご意見がとてもすごくて考えさせられ、参考になるものばかりでした。ホワイトボードにもありがとうございました。
・諦めずに声を出していく。人々とつながっていくことの大切さ。
・実際にパワハラで環境を変えた方や戦っている方の話を聞き、女性の議員の比率をまず上げて行く事が必要と考えます。
・セクハラ以外のハラスメントについても学ぶ場、時間が欲しい。
・大学の方々の生の声が聞けてよかった。
・たくさんの意見が聞けてよかったです。
・時間がもう少しあるともっと良かったと思います。とても良い話も聞けて良い機会でした。
・楽しかった。


③今後どのような企画に参加してみたいか

・ハラスメントに関する意見交換会。
・他のハラスメントについても詳しく知りたい。
・セクハラ、ジェンダー、慰安婦問題。
・婚姻の平等など。
・また#MeTooさっぽろミーティングに参加したい。


ご参加いただいた皆さま、たくさんのご意見・ご感想、誠にありがとうございました!


最後になりましたが、お忙しい中ご登壇くださいました、辻智子さま、大國充彦さま、資料のご準備をいただきながら当日はご登壇が叶いませんでした須賀朋子さま、当日も道内各地よりご参加いただきましたキャンパス・セクシュアル・ハラスメント全国ネットワーク北海道ブロックの皆さまに、心よりお礼申し上げます。


また本企画の開催には、下記の団体のご協力をいただきました。重ねてお礼申し上げます。


【共催】札幌市男女共同参画センター(指定管理者:(公財)さっぽろ青少年女性活動協会)

【後援】認定NPO法人 ゆいネット北海道(性暴力被害者支援センター北海道[SACRACH-さくらこ])、北海道ジェンダー研究会、公益財団法人 北海道女性協会(北海道立女性プラザ)、NPO北海道ネウボラ


#MeTooさっぽろ実行委員会


※メディア掲載

・2018年8月17日(金)、北海道新聞、朝刊全道、生活・くらし面、「#MeTooさっぽろミーティングVol.2『学ぼう!話そう!セクシュアル・ハラスメント』」(開催告知記事).

・2018年9月3日(月)、北海道新聞、朝刊全道、生活・くらし面、「『セクハラは人権侵害』札幌で後援や討議」(開催報告記事).

※イベント告知記事

https://wan.or.jp/calendar/detail/5198