先日、学校法人城西大学の理事小野元之氏に対する損害賠償請求事件について、水田宗子さんの勝訴を速報としてお知らせしましたが、このたび続報として、裁判の概要ならびに代理人弁護士のコメント及び水田さんのコメントを発表いたします。
今回の判決に寄せた水田さんと弁護士の心情とともに、今回の一連の事件における本判決の意義が説明されています。
ぜひご一読ください。
水田宗子さんを支援する会一同
1、 裁判の概要
① 事件の概要 (平成29年(ワ)第9119号 損害賠償請求事件)
学校法人城西大学の理事長であった原告水田宗子は、本件学校法人の理事会(平成28年11月30日)において、被告小野元之によって、理事長解任の緊急動議の提出とともに、原告があたかも認知症に罹患し、学校法人内でパワハラ、セクハラをしたり、人事権を濫用していたり、業務上横領しているなどの発言をされ、原告の名誉が毀損され、また、侮辱されたと主張して被告に対し、不法行為による損害の賠償として、慰謝料1000万円及び弁護士費用100万円並びにこられに対する上記発言のあった不法行為の日である平成28年11月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。
② 判決 (平成30年9月12日)
被告は原告に対し、55万円及びこれに対する平成28年11月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。原告のその余の請求を棄却する。訴訟費用は、これを100分し、その95を原告の、その余を被告の各負担とする。
2、代理人弁護士のコメント
ご承知のことと思いますが、水田宗子先生と学校法人城西大学らとの間には、現在4件の訴訟が係属していますが、これら事件とは別に小野元之氏個人との間の訴訟につき、9月12日、判決が言い渡されました。
この事件は、水田宗子先生を理事長から「解任」した平成28年11月30日の同大学理事会において、小野氏が解任動議の提出理由として述べた発言の違法性が論点となった訴訟です。
水田先生は、小野氏の発言は水田先生の社会的評価を貶めプライドを不当に傷つける違法なものだとして、小野氏個人を被告として東京地裁に損害賠償の訴訟を提起しました。今回の判決で、裁判所(東京地裁民事大5部)は、小野氏の発言が理事会という密室の中でなされたとの理由で、社会的評価を貶めているとの点については当方の主張を認めませんでしたが(ただしこの判断には大いに問題があります)、水田先生のプライドを不当に傷つけているとの点は認め、小野氏の発言を違法であるとして同氏に対して55万円の支払いを命じました。
理事会での小野氏の発言は常識的に見てひどいものだったことから、私は、自ら強いと公言されている小野氏の正義感が、どれほどのものか見てみようとの皮肉を込めて、証人尋問のなかで、理事会での発言は今でも一点の非もないと考えているのかとたずねました。これに対して小野氏は、自分は正しいことをいったのだと供述し、謝罪はおろか非を一切認めませんでした。このやりとりから明らかなように、この裁判は、小野氏の発言の正当性を巡って争われたものであり、小野氏の強弁にもかかわらず裁判所は小野氏の発言が違法であると断じたのです。
小野氏のこの違法発言は、多くの理事の面前で行われたもので、この理事会に出席した理事たちは、面前で行われた違法行為の目撃者です。ところが、小野氏の発言をたしなめた理事や監事の先生方は全員その地位を失い、その余の理事たちは、小野氏の違法行為を制止せず却って小野氏を理事長代理にまで押し上げているのです。さらに、仄聞するところによれば、自らの違法行為の責任を問われたこの裁判のために小野氏が依頼した弁護士の報酬は、小野氏ではなく大学が負担しているようです。これについても小野氏以外の理事たちが承認しているのだとすると、一体この大学の理事たちの見識はどこにあるのか。正直あきれかえっています。
大室俊三
3、水田宗子さんのコメント
支援をしてくださる皆様へ
小野元之氏に対する訴訟において、東京地方裁判所が人格権を侵害する不法な侮辱発言として小野氏に対して損害賠償を命じたことに安堵しております。
小野氏の発言は、2016年11月30日の理事会において同氏が理事長解任動議の中で述べたものです。公共性の高い大学法人の公的な理事会の場での発言が人格侵害行為であると判断された意義は大きいと思います。
今回の判断は、理事会決議もなく小野氏が恣意的に組織した会計調査委員会によるものではありません。国家機関である裁判所の判断です。そして、会計調査委員会での調査と異なり、小野氏に対して十分反論の機会が提供されたうえでの明確な違法判断です。その意味でも極めて大きな意義を有するものです。
教育を司る文部科学省の事務次官経験者が、私立大学の理事会において現職理事長を解任するために、寄附行為上の手続を履践せず不意打ちの緊急動議を出し、その中で人格権侵害の侮辱行為を犯すなど、前代未聞だと思います。
今回の判決を受け小野氏が真摯に反省されることを期待しておりましたが、学校のウェブサイトで同氏が発表した内容を見る限り、司法による違法判断を真摯に受け止める姿勢が全く見られず、大変残念です。それどころか、95%と5%という訴訟費用の負担割合について独自の解釈を開陳し、あたかも金額の多寡が判決の意義を決定するかのような印象を与えていることは、自身の発言を違法であるとした司法判断を矮小化する以外の何ものでもありません。
特に小野氏は、小野氏の発言が「理事の正当な職務行為としてなされたものであり、しかも、その発言は、推測的、婉曲的、論評的であるので、不法行為としての名誉毀損行為にあたらない」との主張について、裁判所で「概ね」認められたと指摘していますが、この指摘は明らかに誤りです。
判決は、小野氏の各発言が非公開を前提とする理事会の場でなされたこと、そして小野氏及びその関係者が各発言を伝播させたと認めるに足りる証拠がないことから、小野氏の各発言が「公然となされた」とは言えないため、名誉毀損が成立しないと判断したものです。小野氏の各発言が「推測的、婉曲的、論評的であり、そもそも名誉棄損的表現に当たらない」という主張は全て排斥され、ただ、その発言が公然とされたとまでは言えないというに過ぎません。
ましてや、小野氏の各発言が理事の正当な職務行為であったとか、その発言が合理的根拠をもってなされたとするものではありません。小野氏の本判決の解釈はあまりに我田引水なものです。
私が大変驚いたのは、小野氏個人を相手に訴訟を提起した訴訟にも関わらず、大学が敗訴判決に対する小野氏の独自の見解を大学のウェブサイトに公表させただけでなく、その独自の意見に大学が名を連ねたということです。判決内容を精査もしないかかる軽率な行為は、大学としての見識を疑わせるものです。
前監事は、在職中、理事会における小野氏の発言が法令違反のおそれがあると強く指摘していました。しかし、小野氏及び小野氏に追従する理事はこれを一切無視し、小野氏の違法行為を指摘した元監事を再任しないという形で2017年3月末をもって大学を追い、小野氏の関係者、すなわち学校経理研究会の関係者(現在同研究会顧問)と元総務事務次官を監事として就任させました。そして、新任の監事は、前監事の意見を承知のうえで、2016年度の業務執行は適正に行われた旨の監査意見を出しています。
しかし、小野氏の理事会における発言が人格権侵害を犯した違法なものであると裁判所が判断した以上、小野氏には理事として善管注意義務違反があったというべきです。また、前監事らの指摘を無視し続け、小野氏の行為について一切不問に付していた理事・監事らも同様に監督義務を怠った善管注意義務違反があったというべきだと思います。
小野氏を除く現理事(その理事の中には元裁判官まで含まれています)及び監事は、民間の会計調査委員会による報告とはその重みが全く異なる今回の司法判断を尊重するものと思っていましたが、これを軽視し、一言の反省の言葉も公表されていないことに愕然としました。
この訴訟は小野氏個人に対して提訴したものですが、小野氏は大学の費用で弁護団を形成し、職員を使い(法廷には大学職員が傍聴に訪れていたそうです)、教職員を招集して説明会を行い、その上に大学のホームページを用いて大学内外に自分の主張を広めています。
小野氏は「デタラメ経営」であると非難した私が主導する経営の下ですら高額の理事報酬を得ていました。公的な理事会において人格権侵害である侮辱行為をし、訴訟となる事態を招きながら、それに責任を感じるどころか、十分な報酬を得た上その訴訟費用まで大学に負担させるような人物が現在、学校法人城西大学の理事長特別補佐なのです。
もう一度申し上げます。今回の判決は、小野氏の組織した民間人が判断したものではなく、適正手続きを経た司法による判断です。小野氏は真摯に受け止め謝罪と反省をするべきだと考えます。少なくとも教育に携わる者、かつて元文科省事務次官として国家の教育行政に関わってきた人物が人格侵害の発言をしたことは率直に反省すべきことです。
小野氏は、「学校法人城西大学における、相手方の何らかの地位が確認されたものではありませんし、相手方が理事長職を辞任したことについて、何らかの瑕疵が認められたものでもありません。」とも述べていますが、この判決は、①寄附行為の規定にない小野氏による緊急動議、②寄附行為の規定に基づかない小野氏の理事長代理就任、③理事長代理を自称する小野氏が理事会決議も経ずに組織した会計調査委員会の恣意的な調査結果に基づく理事解任(緊急)決議が、いずれも瑕疵のないものであると裁判所が認めたものでもありません。
小野氏が主導して強引に作り出した現状に法律上の瑕疵がないことを裁判所が確認したものではありません。それは係属中の他の裁判の判決の中で判断されることです。
現在、法人局長北村幸久氏及び学校法人城西大学に対する名誉毀損訴訟、会計調査委員会の恣意的な判断に基づく理事解任(2017年9月)の無効確認を求める訴訟、小野氏による
不当な排除行為に対する損害賠償請求訴訟等が係属中です。
今回の判決は、そのような一連の違法行為の端緒となった理事会で、違法な侮辱行為が小野氏によって行われていたことを確認する重要な意義を有しています。
なお、前述したとおり、理事会が守秘義務を有する理事によって構成される場であること、そして、発言が小野氏らによって外部に伝播した可能性について証明が十分ではないという理由から、名誉毀損の一要件である「公然性」を欠き、小野氏の発言によって「社会的評価を低下させた」とまでは言えないとしたのが今回の判断です。つまり、小野氏の発言は、それが文部科学省での会見のような公の場でなされていれば十分に名誉毀損を構成する内容であるということです。本裁判では、小野氏の発言が真実であったという点については何ら証明がされていません。小野氏の発言が真実でないだけなく、合理的な根拠に基づかない、いい加減なものであったことは、別事件の裁判でいずれ明らかになることです。理事会の公然性の要件も充足するものと考えておりましたので、この点については今後の対応を 代理人弁護士とよく相談したいと思っております。しかしたとえ人数の限られた理事会であっても人格を傷つけるような発言をしてはいけないという判決が下ったのです。
小野氏は自分の裁判費用を大学に負担させているばかりか、大学のホームページを使って自身が被告になっている敗訴判決をあたかも自分(たち、大学)の勝訴であるように、しかも判決内容をミスリードする形で学内外に広めています。
城西大学を自分の保身のためにやりたいように使うこうした小野氏のやり方に、城西を愛する者として大変憂慮しています。
私は、城西大学、城西国際大学が建学の精神を継承し自由で独自の教育ができる私立大学であり続けるよう願っています。
建学の精神に基づき、城西の個性を発揮できた様々な教育プログラムが文科省元官僚の小野氏によって次々に破壊されています。私の教え子や私と一緒に女性学に取り組んでいた教員の一部が大学を追われる事態が引き起こされました。
デタラメ経営と小野氏が罵倒した私の経営の下では、少なくとも、城西で学びたい者には門戸を広げ、城西での研究・教育の自由を否定したことはありません。文科省の天下り官僚により城西が建学の精神を失った平凡な私立大学にされていく事態を黙って見てはいられません。
伸び代を多く蓄えた城西大学、城西国際大学の先生方、職員、そして学生が、のびのびと勉学・教育・研究・イノベーションに全身全霊で当たっていける大学でなければ、建学の精神は守られているとは言えません。
建学の精神を守るため、城西の正常化を目指し私は闘い続けるつもりです。今回の勝訴判決はその第一歩です。
皆様の変わらぬご支援と励ましに心からお礼を申し上げます。
平成30年9月18日
水田宗子
【今までの記事は以下をご覧ください】
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