食のテキストとは、農産物、あるいは海産物などの履歴を作ることだ。環境、品種、歴史、文化、栽培法、栽培の履歴、量、栄養価、出荷法などを調査し、実際に料理までを作り食べてレシピまでを1冊にまとめるものだ。
これまでに大分県竹田市「サフラン」「カボス」、岐阜県高山市「宿儺かぼちゃ」、兵庫県豊岡市「コウノトリ育む米」、高知県中土佐町「大野見エコロジーファーマーズ(米)」、秋田県能代市「ねぎ」、茨城県常陸太田市「常陸秋そば」、茨木県小美玉市、山口県長門市「長門ゆずきち」ほか野菜類のほか魚類など各地で取り組んでもらった。
テキストを作成をすると同時に、地域のほかの野菜、果実、魚介類、肉類などを調査をして、そこから料理家にお願いし、レシピを創ってもらい、農家、栄養士、直売所、食に携わる人など、希望者を集めて、参加型で料理を作り、試食会を行う。あるいは、地域にある農家、茶室、レストランなどを開放してもらい、そこでテキストを使い、食材の背景から紹介をして料理を出し食べてもらう。
そんなことをこれまで50か所ほどおこなってきただろうか。
この試食会が実に楽しい。なにせ旬の地元の物を使う。20から30種類の料理が並ぶ。食材がいいから美味しい、見た目が彩り豊か、多彩で豊かな料理が並ぶ。これを四季ごとに行えば、さまざまなレシピが登場することとなる。なにより参加した地元の人が驚く。「こんな食べかたがあったの」「なんにもないと思っていたらなんでもある」と、毎回、評判がいい。
テキストをつくることを始めたきっかけは、農家に消費者に直接お米を売りたいと千葉県香取市と茨城県稲敷市の農家に相談をされたことからだった。代掻き、種籾消毒、田植えから収穫までを、自然環境の映り替わりとともの紹介し、おにぎりと糠漬けを食べてもらうと言うもの。最初、農家さんからは「稲作の細かいこと話しても消費者に分かるのか?」と言われ「わからないから話すんです」と説明して実践することとなった。実際に公開で行ったところ大好評だった。参加者から「田んぼに行ってみたい」と言われ、そのあとツアーを組み、農家で薪で炊いたお米で、ご飯を食べてもらった。これも大好評。そして米の売り上げもあがったし、高取引にもつながった。
農産物を売り出したい、ブランドにしたい、食育をすすめたい、直売所で売りたい、などの要望があったときに勧めているのが食のテキスト化だ。そして、テキストをベースにワークショップを開いてきた。各地で、取り組みを紹介するたびに、そのやり方を知りたいと要望が多くあった、そこからガイドブックを作ることとした。
実は、テキストまで作成するという大きなヒントとなったのは、イタリアに行き、スローフードのワークショップを体験してからだ。向こうでは、現地のチーズ、ワイン、バルサミコ酢、果物などの調査を大学連携で行っていてガイドブックを作成し公開講座を行っていた。これが商取引や、観光、輸出にも大きな力を持っていることを知った。ぜひ日本でもやってみたい。そこから実践が始まった。
テキスト化とワークショップを実施し、その先の売り込みがもっとも大切なことだ。マスコミ、バイヤーなど、どこに売るかを的をしぼり披露を行う。テキストがあるし、実際に食べてもらえるので訴求力は抜群。マスコミにも正確な記事を書いてもらえる。そして重要なことは、地域主体で行えば、ノウハウが共有化されて地元に蓄積されるということだ。
「地域の食をブランドにする! 食のテキストを作ろう」
岩波ブックレット(岩波書店)
金丸弘美著 本体620円(税込み670円)
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2018.10.14 Sun
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