第22回女性文化賞が決まりました。
今回は、久郷ポンナレットさんに女性文化賞を贈呈します。
久郷ポンナレットさんは1964年カンボジアで生まれ、現在は日本で生活しておられます。
1975年10歳の時カンボジアに成立したポルポト政権のもとで両親と4人のきょうだいを失い、自らも強制労働をさせられた後タイに脱出、1980年8月、日本に留学中の姉をたよって来日。難民としての苦難や「東南アジア出身女性」への差別も経験しました。
その後16歳で神奈川県内の小学校4年に編入学して19歳で卒業、働きながら夜間中学校に通い、35歳になってから通信制高校で学びました。
この間に日本人男性と結婚して日本国籍を得ましたが、母国で弔われることなく眠る両親やきょうだいのことを忘れ難く、2001年に自らの体験を『色のない空』として出版、2006年には故郷プノンペンに肉親と同地で犠牲になった多くの人々のために慰霊塔を建設して合同慰霊の儀式を行いました。
このとき、かつてポルポト支配下にあって自分たちを迫害する立場にいた人びといっしょに慰霊をおこない、その経験を含めた『虹色の空』を2009年に出版、2015年には娘の真輝さんと共著で『19歳の小学生』を出版しました。
現在は神奈川県平塚で暮し、テレビやNHKラジオ深夜便などに出演する傍ら、学校や地域での講演活動を通じて自らの体験を語り、「戦争はすべての人の人権をうばってしまう」「世界に、憎しみと対立ではなく和解と平和を」という立場から「平和・命・人権」の大切さを訴えて多くの人びとの共感を得ています。
わたしは、9月にプノンペンを訪ね、慰霊塔へのお詣りとともに、虐殺の跡を残すトゥール・スレン博物館を見学してきました。
ポンナレットさんは、幼くして経験した言語に絶する苦難をただ「悲惨な体験」としてだけではなく、「憎しみではなく相互理解を」「いのちと人権を大切にすることこそ平和の原点」という考えに昇華させ、母語ではない日本語で3冊も本を書き、平和への思いを発信して来られました。
その活動に敬意と感謝の意を贈りたく、ささやかですがわたし個人の手づくりによる女性文化賞をさしあげる次第です。併せて、ポンナレットさんを支えてこられたご家族や、彼女とともに生きぬいてこられたごきょうだいの方がたにも感謝したいと思います。
今回も授賞式などの儀式はしませんが、町田駅近くのカンボジア料理のレストラン「アンコール トム」で、ご家族や親しい方がたとともにささやかなお祝いの会をいたします。ここはお姉さんのペン・セタリンさんが経営され、「小さな国連」と呼ばれるほど豊かな国際交流の場にもなっています。
◆女性文化賞は、1997年に高良留美子さんが個人で創設され、2016年まで20回にわたってお一人で続けてこられた手づくりの賞です。
「文化の創造を通して志を発信している女性の文化創造者をはげまし、支え、またこれまでのお仕事に感謝すること」を目的とし、賞金50万円、記念品として女性作家によるリトグラフ一点を贈呈してきました。
2016年第20回をもって最終回にされるとき、高良さんの「志を継ぐ方を」というよびかけに応じて、米田が2017年の第21回から上記の趣旨と「一人で決める」スタイルを引き継いだものです。
2018年12月3日