小原一真写真展「Exposure / Everlasting – 30年後に見えなくなるもの」
2019年2月2日-3月3日  大阪市福島区フォトギャラリー・サイ

Photographer’s Note
未来について考えたい

2011年6月より福島第一原発の取材を始め、高校を卒業したばかりの18歳の作業員たちに出会いました。その後、彼らの何人かが結婚し、子どもが生まれ、新たな家族を築いていきました。彼らの子どもたちを見ながら、そして私自身も二人の子の父親になり、この事故を引き継ぐこれからの世代のことを考えたいと強く思いました。

2015年2月、私は32年前にチェルノブイリ原子力発電所事故を起こしたウクライナへと向かい、それから2年間撮影を続けました。

本写真展は、事故後にウクライナで生まれた3人に焦点を当てながら、原発事故の過去、現在、そして未来を描くドキュメンタリープロジェクトです。「Exposure」では母胎で被曝し、甲状腺の病気を患ったマリアの30年の半生を通し、目には見えない彼女の障害、痛みについて想いをめぐらせます。「Everlasting」では、収束作業員のために新たに作られた町、スラブチッチ市で生まれ育ち、作業員として働く若き夫婦、パーシャ、ナレシュカの日常を通して、収束・廃炉作業とともに生きる人々について描きます。

原発事故は、未来に何を残し、そして、それはどのようにして引き継がれていくのか。本写真展を通して、現在の私たち、そして、これからの未来について考えるきっかけになることを願います。          小原 一真

Owner’s Note
今回、2016年より企画していた写真展が始まります。それがいよいよ実現されることを心から嬉しく思っています。
小原一真の活動は、常に「人」と共にありました。彼が写真活動をはじめたのは、東日本大震災の被災地。彼がレンズを向けたのは、被災した人や家族でした。そして、原発事故直後の反原発を声高に叫ぶ世論の中、事故現場で被曝を受け入れながら収束作業にたずさわる作業員百人以上に声をかけて、当時、決して日本のメディアが取り上げることをしなかった原発作業員数十名の言葉と表情を届けてくれたのが小原一真でした。被災地に、現場に、人がいる。彼らの小さな声を分かち合うことで遠い場所にいる私たちの白地図に点を打ち、その場所が決して空白ではないことを教えてくれました。

その後、渡英し、芸術大学院に籍を置きながら、彼が取材に向かったのが事故から30年をむかえたチェルノブイリでした。しかし、この「30年目のチェルノブイリ」というテーマに対して、ヨーロッパの編集者やジャーナリストたちはほとんどが否定的だったようです。「チェルノブイリ」はすでに使い古されたキーワードで、30年という時間にすらニュース性は無いという見解が多かったようです。それでも小原はチェルノブイリへ向かいます。

その理由は明らかです(と、私は勝手に思っていますが、、、)。彼にとってチェルノブイリは他人事ではなかった。彼はチェルノブイリの「今」に福島の「未来」を重ねて見たのだと思います。私たちが30年後に手渡す世界がどんな世界なのか。30年後の私たちは何を引き受けているのか。そして、子どもたちが生きていく世界を肯定するために私たちはどんな橋を架けてあげることができるのか。たとえ、その問いに対する答えはなくとも、せめて気配だけでも感じることは出来ないのか。

私たちの世界を支えているのは、ゆるやかな命のリレーです。誰かが何かを呑み込み、次の命のための礎となる。小原一真の写真が教えるもの、それは「何かを呑み込もうとしている誰か」が「そこにいる」ということです。

私たちの命は、そして未来の命は、その礎の上に乗せてもらう小さな次の礎です。そして、今回の小原一真の展示を観ていただき、自分は何を呑み込もうとしてきたのか、あるいは他者は何を引き受けてきたのか、そして、自分が立つ足元の礎の由来にまで意識を広げて頂く機会になることを願っております。

また、今回の展示は、古民家であるギャラリー・サイの1・2階全館(和室等も含む)を利用する初めてのインスタレーションとなります。一人でも多くの方に足をお運び頂けるよう願っております。      2019年1月

*写真シリーズ「Exposure」は世界報道写真展2016で世界45か国を巡回、また、フランス、スペイン、ジョージア、ウクライナ、アテネ等の国際写真・アートフェスティバルに召喚されました。ライトボックスを用いたインタレーションを2018年10月より原爆の図丸木美術館、Prix Pictet JAPAN Awardで展示し、本写真展は、それらをさらに発展させた形での巡回展です。展示を希望される方のお問い合わせもお待ちしております。

小原一真(おばらかずま)プロフィール
1985年岩手県生まれ。写真家、ジャーナリスト。
写真集に東日本大震災と福島第一原発・原発作業員を記録した『RESET』(2012/ラースミュラー出版/スイス)、第二次世界大戦における日本の子どもたちの歴史を表現した『silent histories』(2015)、チェルノブイリの過去、現在、未来を描いた『Exposure』(2017)がある。Silent Histories は、米TIME誌Best Photo Book選出、Exposureで世界報道写真賞受賞を始め、国際的な賞を多数受賞。2016年からはフランスの写真フェスティバル、フォトリポーターより助成を受けて、ビキニ水爆実験の犠牲者のプロジェクトに取り組む。国際的な写真フェスティバルに召喚される他、国内外でワークショップも開催、世界報道写真財団の6×6 Global Talent Programの審査員、国際的なブックアワード審査員なども務める。現在、クーリエ・ジャポンにて「日本の侵略を行く」、WIRED JAPANにて「Art x Journalism」を連載中。

»日時/開館、休館日について
2019年2月2日(土) – 3月3日(日)
[休館日] 月(祝日含む)・木
[火・水・金] 13:00- 19:00
[土] 10:00- 19:00
[日] 10:00- 17:00

»入場料
大人800円 / 18歳以下無料
大学生・60歳以上400円
«展示期間中はイベントを多数開催します»

»会場  フォトギャラリー・サイ 
〒553-0002 大阪市福島区鷺洲2-7-19
JR環状線福島駅より福島聖天通商店街を通り「聖天薬局」の角を左折。駅から徒歩10分。
ギャラリー向かいにコインパーキング有(5台)

写真展の公式ウエブサイトは、こちら↓↓↓
http://kazumaobara.com/2019/01/13/exposure-everlasting/