
書 名 Going 婆ぁ Way――昭和を生きた女たち
著 者 門野晴子
発行元 静岡新聞社
刊行日 2019年3月24日
私(著者)は米国から帰国する機内映画で、その冒頭のスーパーに釘づけになった。
「1971年、世界が変化していた。この村はまるで世界から隔離されているようだった」
2017年制作のスイス映画『THE DIVINE ORDER』 ― 1981年女性参政権を国民投票で勝ち取り、憲法に明記されるまでの小さな村の大きな奇跡を描く。
4年前に熱海のケアハウスに転居した私は、世界から隔離されたような無風の熱海ムラを映画に重ねていた。日本は婦人参政権も男女平等も、とうの昔に憲法に明記された人権の先進国だ。が、現代の風はそよとも吹かない。
もっとも近年の保安化・右傾化の波は日本全土を覆い、熱海ムラに限ったことではない。昭和に生まれ、太平洋戦争の過酷な時代を体験し、戦後の大転換を丸ごと生きた女たち男たちの足跡を辿らずにはいられなかった私。
私が転居を重ねた関東・関西のフェミニストや市民運動の知己を訪ね、民主主義の香りを捜し歩いた庶民の闘いの軌跡でもある。
そしていま超高齢社会で人間らしく老い人生を終えるために、闘い続けるバーサンズとジーサンズだけでなく、熱海ムラで身じろぎを始めたバーサンズがいる。後者の彼女らが私にとって小さくて大きなキセキである。
無風のムラでフェミニズムを知らなかったバーサンズを繋ぐものはフェミニズムだった。前出の映画でも言う「フェミニズムは今世紀最大の文化革命だ」と。
市民が活動する会場も少ないムラに、何と私たちの「アジト」までできた。4月の市議選18人の候補者に只今公開質問状を出すのは、「Going 婆ぁ Wayの会」である。
摸糊とした時代、未来へバトンタッチするためにも、顔を上げ背中を伸ばし、大地を踏みしめて“Going”あるのみだ。老いを嘆いてなんかいられない。
元気の出る本を書きました。ご笑読いただけると幸いです。
◆門野 晴子(かどの はるこ)
1937年10月生まれ。教育評論家、ノンフィクション作家。
著書に『老親を棄てられますか』『寝たきり婆あ猛語録』『星の国から孫ふたり――バークレーで育つ「自閉症」児』など。
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