「細胞力」を高める (「身心一体科学」から健康寿命を延ばす)

著者:跡見順子

論創社( 2018-05-16 )


おかしいと思ったら声をあげる。変だと思ったら立ち上がる。不当な扱いをされている人を見たら立ちはだかる。頭にきたら怒る。これまで日本人女性に無かった強さです。でも、よく考えてみてください。声を出すのも、立ち上がるのにも、怒ることでさえ、身体とエネルギーを使う「行動」です。こうしなくちゃいけない!と思った時に、すぐに行動できる身体を持つこと。それは作るものなのです。細胞は思っているだけでは動いてくれません。細胞は活動依存性に生きているのです。自分が女性であることを科学的に把握し、自身の持つ身体を存分に使うためには、まず知ることです。知って、試してみて、自身の身体との呼応を体験してみてください。そうやって自分の中のすごいシステムを再認識してください。この本は、精一杯生きる女性たちへのエールでもあります。もともと筋力を発達させにくい身体を持つ女性。でも生物として重要な柔らかさを持っている女性。自然は、そこに全てのツールを用意してくれています。それを知り効果的に使用することで、長く強く使い続けることができるのです。この本は科学を基礎にした本です。女性のためだけの本ではありません。全ての人を対象とした本です。私は脳しか使わないから良いわと思ったら大間違い。実は行動が脳を作っていると行ってもおかしくないほど、身体と心は密接な関係にあります。怒るために、育てるために、守り闘うために、そして本当は笑い続けるために、身心一体である自身の科学を知ってください。あなたがあなたであるために、この本を役立ててください。

跡見順子
1944年 茨城県小野川村(現つくば)生まれ。お茶の水女子大学保健体育科から東京大学大学院教育学研究科にすすみ、エアロビクス研究で教育学博士取得。同研究科助手をへて教養学部に転出、1994年より総合文化研究科(生命環境科学系・身体運動科学)にて東京大学史上唯一の女性体育教授となる。2007年定年。東大名誉教授。サステイナビリティ連携研究機構及び東大アイソトープ総合センター特任研究員をへて、2013年から東京農工大学客員教授。平成27年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞理解増進部門受賞(受賞課題「いのちを知り生かす身心一体科学の啓発と普及」)。
著書(編著)『骨格筋と運動』、『なぜなぜ宇宙と生命― 宇宙の中の生命と人間』、(分担)『人を幸せにする目からウロコ!研究』『女性が拓くいのちのふるさと海と生きる未来』『16歳からの東大冒険講座1 記号と文化/生命』他多数。