〈今期のテーマ〉 樋口恵子さんのご著書を読む


 和光GF読書会の今期活動は、女性としての大先輩である樋口恵子さんの来歴を著作や講演会でのトークから聞きとり、戦後、女性学の視点を持つ女性がいかに生きてきたのかを考えました。

 初回にはまず、映画『何を怖れる――フェミニズムを生きた女たち』の一部を鑑賞し、樋口さんや日本のフェミニズムをけん引されてきたかたがたの歩みを学びました。そして第2回め以降、『サザエさんからいじわるばあさんへ――女・子どもの生活史』(2016年 朝日文庫)、『私は13歳だった――少女の戦後史』(1996年筑摩書房)の輪読によってメインテーマに迫っていきました。

 「サザエさん」といえば知らない人はいないくらいの超有名キャラクターです。新聞連載漫画でもテレビアニメでも、とても馴染み深いサザエさんですが、なぜサザエさんはあんなに大きな口を開けて笑っていられるのか。樋口さんによればその答えは、サザエさんは家父長制度の枠外にいるからだというのです。なるほどそうか、その視点は「目から鱗が落ちる」くらい新鮮で、サザエさんの家族のありようを見る目が変わり、読書会では「嫁」であることでいまなお女はいかに窮屈に生活しているか、実体験にもとづく事例がたくさんあがりました。ではそこから抜け出す方策は…、女個人の努力ではなく社会的な課題として捉えてアプローチしないとね、とありきたりだけれどつい忘れがちな視点が再確認されました。

 輪読に加えて今回読書会は、和光大学ジェンダーフォーラム主催市民講座「サザエさんに見る家族の戦後史」に協力し、直接に樋口さんのお話を聞く機会を得ました。現代社会学科の授業の一環でもあった講演ののち、少人数で開催したブックトークでは、樋口さんのお考えをたっぷり伺うと同時に、読書会の成果をもとにして読書会メンバーの積極的な質問がブックトークを盛り上げました。

 前期読書会では樋口さんの軽妙だけれど鋭い視点に刺激を受けながら、「女の戦後史」を考えてきました。戦中・戦後を生きてきた女性を生活史の視点から見ていくことは、今までの自分の生活を歴史のなかに位置付けることでもありました。先達の生き方を知ることをきっかけに、活発に意見を交わしながら考察を深められた半年でした。

(写真は、読書会で輪読した樋口恵子さんの著作と講演会ポスター@和光大学ジェンダーフリースペース)