岩手県内の女性議員有志が、人口減や高齢社会の中で、連携を通して情報を共有し、活躍の場をより広げようと、11月11日、盛岡市で岩手ウィメンズネットを立ち上げた。28人でスタート、会長に須賀原チエ子さん(宮古市・元市議)を選んだ。「多様性を尊重し、社会的弱者に寄りそう岩手を目指して」の共同宣言を採択し、県議、市町村議、経験者らが党派、地域を超えて、活動していく。
2年前から、沿岸市町村女性議員ネットワーク(ANE-SANの会)は、連携して女性目線の復興施策を取り上げ、メリットがあったことから、全県に広げようと、新たな組織づくりとなった。
会長の須賀原さんが、議員になったのは震災1年目のときだった。「何もわからず、教えてくれる人もいない。議員活動は個々人なので、仲間との情報交換は刺激になり、勉強になる。まずは議席の3分の1を女性議員にしたい」という。内閣府によると、岩手県の市町村議の女性比率は10・7%、全国平均の13・4%を下回っている。県議は全国で4番目に高いが14・9%だ。
総会後、WAN理事長・社会学者上野千鶴子さんの「どんな社会がほしいのか?」をテーマに、記念講演が行われた。
上野さんは、東日本大震災から8年余り経って、日本は変わらなくては、変えなくてはいけないというあの時の思いが尻すぼみになってはいないか、と問いかけた。今回の震災を第二の敗戦(澤地久枝)と例えるが、女性が参政権を得て70余年、原発は国策として進められた。女性にも責任がある。失敗から学ぶ大切さを忘れては、何もなかったように日々は過ぎていくと警告した。
そして女性の地位の国際ランキング(世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数)でなぜ日本は110位と低いのか。それは政治と経済の分野での進出が遅れているから。投票行動の調査を見ると、女性票は政治を変えなかった。保守を支えたのは女性であり、家族票の一部として動いていた。それが30年前の土井たか子さんブーム以後、女性票と若者票は読めない浮動票となった。女性の投票率は高いが、被選挙権が十分に行使されていない。女性議員が少ないのは立候補しないから。そこに立ちはだかるのは家族や親族と例を挙げた。
また男女の経済格差も改善されていない。働く女性の60%が非正規雇用者。1985年男女
雇用機会均等法が、同時に労働者派遣法も成立。「均等法のアイロニーは、法はできたが適用される人は少ない」。
97年の改正均等法では、セクハラ対応が事業者責任となった。ハラスメントは弱者を思うようにしたいという権力の乱用だ。例えば親が子に、介護者が年寄りに。「子育てやケアをしてきた女たちは、非暴力を学ぶ実践をしている。ここに男を巻き込んでほしい」。
これからの日本、人口は減少し、高齢社会は進む。どんな強者もいずれか弱者、依存者になる。男女平等は男仕立ての服を着ることではない。「弱者が弱者として尊重されること。当事者主権が大事であり、互いに支え合う社会にしたい」と結んだ。
講演の後、会員や参加者ら30人ほどで上野さんを囲み、交流会が持たれた。そこでは、震災被災者に弔慰金などが出た際、戸主単位で出るため、女性には現金が渡らない、アンケートも1軒に1枚で女性の意見が十分に反映されないなどの問題が話題となった。
上野さんは、震災後の検証が必要な時期、会として4年後の数値目標を立て、地域ごとに達成率を出す、議員志望者を会員にするなど、具体的な目標を立ててはと提言。「会の誕生に立ち合った。成長を祈ります」とエールを送った。(而)