
書 名 マスコミ・セクハラ白書
著 者 メディアで働く女性ネットワーク(WiMN)編著
発行所 文藝春秋
刊行日 2020年2月13日
定 価 1760円
「被害者はこのとき、どんな風にピンク色の声を上げたと思う?」
「女性は結婚したらだめだよ。ろくな記者になれないよ」
「抱きしめてもいい?」
「あの先輩女性記者は触らせてくれたのに、君は触らせてくれないの?」
「あー、俺、セックスしてぇ。セックスしてぇ。どうしたらいいんだ?」
「子どもはまだか、作り方は知っているのか」
「後任も、女性でよろしくね」
上司や先輩、夜回り先の警察官や検察官、政治家、官僚、経済人…。メディアで働く女性たちは、仕事で関わる男性たちから、こんな言葉を投げつけられている。言葉だけではない。抱きつかれたり、胸や尻を触られたり、キスをされたり、押し倒されたり。泣きながらひとり帰る日が、いったい幾度あっただろう。悔しくて眠れない夜がどれほどあっただろう。深いダメージを受けている女性たちに、職場の男性たちがさらに追い打ちをかける。「おまえ、またか」「許してやれよな」「早く忘れて仕事に戻らないと、干されちゃうよ」
私たち「メディアで働く女性ネットワーク(WiMN)」による初の著作『マスコミ・セクハラ白書』には、そんな女性たちの苦難の日々が記録されている。マスコミを目指す若い女性が読んだら、こんな業界はまっぴらごめん、と思うかもしれない。
本書に出てくる女性たちは、セクハラに遭ってどうしたのか。加害者に直接抗議した人もいる。告発した人もいる。表だって何もしなかった人もいる。どうしたにせよ、心の傷は残っている。その時の選択を悔やみ、自分を責めている場合もある。
だが私たちは、怒りと屈辱を忘れなかった。忘れることができなかった。損なわれた尊厳を回復しようとした。なにより、踏ん張って、生き続けてきた。
WiMN結成のきっかけは、2018年春に起きた財務事務次官(当時)によるテレビ局記者へのセクハラだった。集った仲間たちはみな、この業界からセクハラやパワハラをなくしたいという願いを持っていた。マスコミ各社の大半は、幹部は男性が独占している。ハラスメントはそういう土壌から、刈り取っても、刈り取っても生まれてくる。その土壌を変えたいと望んでいた。
そうした願いや希望を一歩でも前に進めるために、私たちは企業を越えて連帯した。それがWiMNである。WiMNでの話し合いや学び合いの中から、本書は生まれた。
第一章「私たちのこと」は、ピアカウンセリングを真似て互いにインタビューし合うピアインタビュー(第1部「聞く」)と、自らのことをつづったエッセー(第2部「語る」)から成り、計25本。第二章は「コラム―社会時評」は計9本で、就活セクハラや医学部入試の女性差別、レイプ裁判で相次いだ無罪判決などについての記事を載せた。第三章はメディア・アンケートで、日本国内の新聞社、テレビ局、通信社、出版社、ネットニュース各社、計86社に質問を送り、65社から何らかの回答を得た。
第一章、第二章の計34本の記事は、上記のようなセクハラの実態が書かれているだけではない。男社会のマスコミ業界に飛び込んで働いてきた女性たち一人一人の生き方や考え方が記されている。一見似ているようだが、実はまったく個別的であり、個性的だ。
子どもを産まない選択をしたことで責められ、傷ついてきた記者もいれば、マミートラックの中で苦悩してきた記者もいる。沖縄の基地問題と女性への性暴力のつながりについて書いた人もいれば、性暴力被害者を思いやり「声を上げない選択も尊重されるべきだ」と記した人もいる。
本書は私たちの闘いの記録であり、未来に向けた希望のかけらの集合体である。情報発信を仕事にしている私たちは、それによって人が変わり、社会が変わることを信じている。一つ一つは小さな声かもしれない。しかしその声が、誰かの心に届くことを祈りたい。
◆田村 文(たむら・あや)
『マスコミ・セクハラ白書』編集委員。
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