昨年9月22日に、シンポジウム「『女性』から考える非正規公務問題」は、WANをはじめ42団体の賛同、240人もの参加を得て開催されました。本書は、このシンポジウムの記録を基に、コロナ禍の中、著者が感じたことなどを加筆したものです。
 寄せられた感想を《  》に入れ取り混ぜながら、著者の一人として本書を紹介します。

 戒能さんは、意図的に労働者性を認識しないような仕組みで婦人相談員が作られていったのではないかと、問題提起されています。《一番驚いたのは、婦人保護の根拠法が売春防止法の保護更生だったこと!》

 上林さんは、会計年度任用職員制度について分かりやすく解説し、4月からの導入以降の悲惨な状況を記述しています。《女性職種が非正規化しやすいという指摘がストンと来た。》

 瀬山さんは、女性センターでの組合交渉を、専門職として働きたいという意欲が条件交渉を躊躇させると述べています。《私たちが選択したのは、仕事であって待遇ではない・・・まさにその通り!》

 山岸さんは、ハローワークの雇い止めについて、企業に指導する立場として公正な採用を行ってほしいと訴えています。《雇い止めを恐れる心情、共感しかない。途中で何度も泣きそうになった。》

 渡辺は、自治体は非正規公務員の労務管理が面倒になると、民間委託に流れることを警告しています。《「司書になりたい」という生徒に、夢を持って自分の職業を語ることが出来ないのが悲しい。》

 竹信さんは、「女性」を問題にする理由を6つ挙げて、ケア労働はタダといった女性にまつわる偏見の見直しと、非正規公務の構造を変えていくことを提起しています。

《コロナ禍で、これまで女性が置かれていた不平等の状況が明らかになりつつあります。女性を追いつめる社会を変えたいです。》
《この非正規雇用の悪循環を断ち切るにはどうしたらいいのかと思います。》
《非正規で働き続けることは、今のありようを肯定しているようで、それを助長することに加担しているようで、正直なんともいえない気持ちです。》

◆書誌データ
書名 :官製ワーキングプアの女性たち――あなたを支える人たちのリアル
著者名:竹信三恵子・戒能民江・瀬山紀子/共編
出版社:岩波書店(岩波ブックレット)
刊行日:2020/09/05
定価 :682円(税込)