樋口恵子さんが雑誌で提案されていた「調理定年」という言葉から、人生あらゆることに「やめどき」があるのではないか。激動の時代を生き抜いてこられたお二人ならば、そんな“やめどき”の知恵をもらえるかもしれない……そんな思いから、対談をお願いした。
対談は初めてと伺ったが、これまでも様々な場面で戦ってこられたお二人の話は丁々発止、大変刺激的だった。
本書では、親のやめどき、介護のやめどきといった家族にまつわる話から、人間関係、仕事、そして「自分のおりどき」まで、広く、深く語っていただいている。
とりわけ、日本全体の女性の地位と諸悪の根源は嫁である、という樋口さんの指摘と、真面目で責任感の強い嫁が社会の足を引っ張り、家父長制を再生産させるという上野さんの指摘は、 WANの皆さまには耳馴染みのある言葉だと思うが、いい嫁という存在はとっくにやめどきがきているのだと強く感じた。
また、蔵書のやめどきに端を発し、WANの「ミニコミ図書館」についても触れさせていただいた。教科書では読むことのできない、日本のフェミニズム活動の歴史を垣間見ることで、今を生きる日本の女性たちを後ろ支えしてくれていることに気づく。この人たちがいなかったら、今の自分はなかったのかもしれない。そんなふうに感じさせられた。
この本では、人生の荷物を一つずつ下ろして、これからをもっと楽しんでほしいという願いとともに、始まりのときを振り返るきっかけになってくれたらという思いも込めた。ぜひご一読いただきたい。
◆書誌データ
書名 :人生のやめどき――しがらみを捨ててこれからを楽しむ
著者名:樋口恵子・上野千鶴子
出版社:マガジンハウス
刊行日:2020/09/24
定価 :1540円(税込)