今回は弁護団の倉重都が、順天堂訴訟の争点と、これに関連して、「平等」と「差別」についてお話しさせていただきます

12月17日の弁護団会議の様子です。この日は、みんなの通常業務が始まる前の、早朝から10時までの間に弁護団会議を行いました。
●「平等」とは?「差別」とは?
戦前は、大日本帝国憲法の下、当然のように男尊女卑社会であり、制度上も法律上も、男尊女卑が堂々と規定されておりました。家父長制で、女性には選挙権もありませんでした。つまり、女性は社会の構成員としては認められていなかったのです。とんでもないことですよね。
戦後になり、日本国憲法が制定され、憲法第14条1項に、平等権・平等原則が謳われました。大事な条文なので、ぜひこの機会に知ってください。
憲法第14条1項 「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」
では、「差別」とは何でしょうか? 全員を全く同じように取扱わなければ、即「差別」なのでしょうか? そうだとすれば、国民全ての人が一律同じ金額の税金を払う必要もでてきます。たとえば、「所得税は全員年額100万円」という決まりがあったら、年収200万円の人も、年収2000万円の人も、支払う所得税は同じ100万円ですから、一見「平等」ともいえそうです。あるいは、スポーツや体育大会で、身体的なハンディのある人も、そうでない人と全く同じ条件で競技をして勝敗を決する、というのも、一見「平等」といえそうですね。しかし、世の中には、様々な理由で、様々な状況の方がいらっしゃいます。これらの場合、むしろ、全く同じ条件で一律に取り扱ってしまうことが、さらに「不平等」を促進することになってしまいます。このような取扱いの区別は、「差別」とはいいません。このような取扱いは、「平等」に近づけるためのものですから、許される合理的な区別です。つまり、平等原則とは「等しいものは等しく、等しくないものは等しくなく取扱う」ことを要求するものなのです。
そう考えた上で、次の問題は、許される「合理的な区別」と、許してはいけない「差別」の峻別方法です。裁判では、その峻別が争点になることがあります。峻別は、「人により取扱いに差異を設けたことに、合理的理由があったかどうか」で判断します。合理的理由があると認められれば、その取扱いは平等原則に反しておらず、逆に、合理的理由があるとは認められなかった場合、その取扱いは「差別」ということになります。そして、その異なる取扱いをする事由が、憲法第14条1項に挙げられた「人種、信条、性別、社会的身分又は門地」の場合、合理的理由の有無は、とても厳しく審査され、ハードルが上がります。ここに挙がっている事由は、我々人類が長年に渡って安易に差別してきた事由で、差別されやすく、そして、最も差別してはならない事由だからです。
憲法自体は、公的権力が国民に対して差別をすることを禁止するものですが、公的権力でなくても、差別をしてはいけないことは、社会で共通の規範ですし、ましてや、教育機関である大学は、条約・教育基本法・学校教育法などで、公正公平を求められております。当然、「差別」してはなりません。
●順天堂訴訟の争点
さて、順天堂に対する訴訟の話に移ります。順天堂は、裁判の場で、「入学試験で女性を不利益に取り扱ったこと」自体は認めております。しかし、順天堂は、「女性を不利益に取り扱ったのは、女性の学生を受け入れる寮などの設備が足りなかったからであり、それは大学の財政の問題で、大学側に認められた裁量の範囲内だ」と主張をしております。順天堂のこの主張は、「女性と男性とで異なる取扱いをしたことには、合理的な理由がある」という主張で、「女性を不利益に取扱ったことは、「差別」ではなく、合理的理由があるから許されるものだ」というものです。つまり、順天堂に対する裁判の争点は、「異なる取扱いについての合理的理由の有無」です。
順天堂は、 男女で異なる取扱いをした合理的理由として、「女性用の寮などの設備不足」を挙げています。しかし、、、あれ?? 順天堂が、一番最初に、記者会見で主張していた理由は、「大学受験の年齢くらいの女性は、同じ年齢くらいの男性より、コミュニケーション能力が高いから、コミュニケーション能力が低い男性を救うために男性に加点した。そして、コミュニケーション能力の年齢による男女差は、海外の論文でも証明されている」ではありませんでしたか? 摩訶不思議なことに、順天堂は、一番最初に主張したこの理由を、裁判では一度も主張してきておりません(順天堂が挙げた「論文」の著者は、そのようなことは書いていないと言ったことも私達の記憶にありますよね)。このように、順天堂は、異なる取扱いをした理由を裁判で変えてきているのです。変えているということ自体、そもそも合理的な理由なんてなかったことの証左ですよね。確固たる理由があるなら、変わるはずなんてありませんし、裁判でも当然、堂々とそのような主張をするでしょうし。裁判が始まってから順天堂が一度たりとも触れていない「コミュニケーション能力」という理由を前面に出して、「先生」などと呼ばれている50~60代以上の大人の医者が雁首揃えて並んだあの記者会見は、いったい何だったのでしょうか?
私達弁護団は、現在、この順天堂、そして東京医大、さらに聖マリアンナ医科大に対して裁判をしております。順天堂大学に対する訴訟は、弁論準備手続といって、関係者以外は入れない手続きになっておりますが、他の2つの裁判は、現在、傍聴可能です。裁判の中身を紹介しているホームページもありますので、ぜひご覧になってくださいね。今後とも応援よろしくお願いします。
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