
本書は、女性参政権を獲得して2回目の総選挙で国会議員となった福田昌子の足跡を辿りながら、戦後ほぼ10年間の「女たちの国会」を振り返ったものです。
戦後第1回の総選挙で39名の女性議員が誕生したことは、良く知られていますが、第2回の総選挙では、女性の当選者は15名と激減しました。産婦人科医であった福田昌子は、社会党から福岡選挙区で立候補し、当選した戦後の数少ない女性議員の一人でした。
当時、GHQの占領下で、新たな社会制度の枠組みを決定する法律が矢継ぎ早に審議されていましたが、女性の人権や地位に関わる法案も多数提出されていました。
その中で福田昌子が特に関与した、優生保護法、性病予防法、売春等処罰法案、看護制度改革、そして未亡人、母子福祉問題に焦点をあて、こうした課題にどのように取り組んでいったのかを国会議事録などから検証しました。
福田は産婦人科医であったことから最初に取り組んだのが優生保護法でした。現在、同法による強制不妊手術被害者から国家賠償請求訴訟が提起され、その人権侵害が問題となっていますが、福田も強固な優生思想の持ち主で、優生政策を推進する側でした。その一方で女性の「産む産まない」の権利を主張し、中絶の合法化をめざし、母子福祉の充実を求め、また、当時、当たり前のように行われていた男の買春に怒り、政治を通して社会を変え、「女性解放」を目指した人でした。当時、福田昌子と同じようにこうした課題に取り組んだ女性議員が少なからずいますが、多くは「忘れられている」ようにみえます。
今年は、女性参政権行使75年となりますが、相変わらず女性の議員数は低迷しています。2018年には「候補者男女均等法」が成立し、政治分野でのジェンダー平等が喫緊の課題とされています。こうした中、戦後、女性の人権や地位向上を求めてきた女性議員の足跡を検証し、共有し、継承していくことは、次世代の政治を担う女性たちに自信と勇気を与えるように思います。
さらにこれら戦後期の女性議員が取り組んだ諸問題、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ、多様化する性産業、シングルマザーの生活難など、今もなお政治課題として直面しています。
戦後の女性議員の活動の正の面も負の面もきちんと見ていくと、歴史は多くの教訓を伝えてくれます。当時のフェミニスト女性議員たちの政治への情熱を感じ取るだけでも元気が出ます。
目次
序 章 参政権を獲得して
第一章 優生保護法 ―中絶の合法化と優生思想
第二章 性病予防法・売春防止法 ―性の国家管理をめぐって
第三章 看護制度改革(1)―その理想と現実
第四章 看護制度改革(2)―金子みつとオルト
第五章 「未亡人」問題と母子福祉
終 章 国会に別れを告げて
福田昌子関連略年表・索引
◆書誌データ
書名 :福田昌子とその時代――戦後改革期 女性国会議員の10年
書社名:佐藤瑞枝
頁数 :268頁
出版社:ドメス出版
刊行日:2021/3/1
定価 :2640円(税込)
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