瀬戸大橋タワーから臨む瀬戸内海:撮影筆者


各大学に対する訴訟が続いています。
*3つの訴訟の現状
 東京医大については、2019年3月の訴訟提起から2年を経過し、原告被告双方の言い分はある程度出し尽くされたのではないかと思います。現在は、進行協議期日という非公開の手続で、原告の陳述書の提出、尋問をどうするかなど、今後の進行についての話し合いが行われています。4月に裁判長の交代もありましたので、更なる争点整理が行われる可能性もあるかとは思いますが、今後もしばらく進行協議期日が続いたうえで、原告本人などの尋問手続に移っていく流れになろうかと思います。次回期日は2021年6月9日です。

 順天堂大学についても、2019年6月の訴訟提起からもうすぐ2年になります。これまた非公開の手続である弁論準備手続きで、原告と被告双方が準備書面という形で双方の主張をやりとりしています。次回期日はまもなく2021年5月12日です。この弁論準備期日にて、原告は、被告の入試により原告がどのような権利を侵害されたのか、また具体的に生じた損害の額について詳細に論じる準備書面を提出する予定です。東京医大の事件同様、原告の陳述書提出、尋問準備と進んでいくものと思います。

 聖マリアンナ医科大学については、2020年10月に原告4名で訴訟提起を行い、2021年3月1日に第1回、4月30日には第2回の口頭弁論が、いずれも公開の法廷で行われました。第1回期日では、わたくし佐藤が、原告代理人を代表して意見陳述をさせていただきました。意見陳述では、被告が性別による一律の不利益取扱いをしていたことは明らかであるにもかかわらず一貫してこれを否定し続けていること、文科省が、同大学に、社会に対して合理的な理由を持って説明する責任を尽くすよう指導したにもかかわらず何らこれが果たされていないこと、被告の、差別を認めず反省も謝罪もない不誠実な態度が原告の精神的苦痛を大きくしていることなどについて述べました。
( https://fairexam.net/wp/wp-content/uploads/2021/03/原告代理人意見陳述書.pdf 
第2回期日では、被告の各年度の入試手続がそれぞれ全体として違法であること、被告の違法行為により原告がどのような権利を侵害されたのか、具体的にどのような損害が生じたのかについて詳細に論じる準備書面を提出しました。本件の手続については、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、オンラインでの準備手続(書面による準備手続)で行われることとなりました。次回期日は2021年6月24日です。

*大学側の主張
 当弁護団で提起している訴訟はこの3つであり、それぞれ女子受験生をどのような方法で不利益に取り扱っていたかという点が異なりますが、その主張も、それぞれ大学によって異なります。
 先にも述べましたが、聖マリアンナ医科大学は、現在のところ、性別による一律の不利益取扱いがあったこと自体認めていません。
 順天堂大学は、大学として男女異なる合格判定基準を設けていたことは認めるものの、どのような入試が学校設置基準に定められる「公正かつ妥当な方法」であるかは明確でないとして、大学に「公正かつ妥当な方法」で入試を行う法的義務自体がないとしています。大学が、全受験生に対して責任を全く負わない、という主張です。
   東京医科大学は、一律の不利益取扱い(得点調整)があったことは認めていますが、大学が組織的に得点調整を行った事実はなく、また、得点調整により合否に影響が及んだ一部の受験生はいたがそのことで「試験の実施」が全体として違法となるわけではないと主張しています。これによれば、合否に影響のあった受験生に対する一定の責任を必ずしも全く否定はしないものの、合否に影響のなかった受験生に対する責任は明確に否定するということになろうかと思います。点数調整が「組織的でない」という大学の主張を受け、弁護団としては、当時学長であった鈴木衛氏の尋問を求めていきます。是非ご注目ください。

*都立高校の男女別定員制について
 また、弁護団では現在、東京都立高校の男女別定員制について議論しています。
 少し前、HNKでも報じられました(https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20210325.html)が、都立高校は、全国で唯一、全日制普通科の定員が男女別に設けられており、男子よりも女子の合格最低点が高くなる傾向にあるそうです。つまり、同じ高校を受験したのに、合格した男子よりも高い点数を取った女子が不合格となっているというのです。
 「専門家に聞く」というリポート(https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20210423a.html)のなかで当弁護団の笹泰子護士も指摘するとおり、性別による別異取扱いは、合理的な理由がない限り憲法14条1項(法の下の平等)で禁じられていますし、国連女子差別撤廃条約10条では、教育分野において、男女平等のため「同一の試験」を享受する機会の確保が求められています。男女で異なる取扱いをすることはかなりのことがなければ許されないはずです。
 去る2021年4月27日には、参議院文教科学委員会で吉良よし子参議院議員がこの問題について質問し、萩生田大臣が「高校入試において合理的な理由なく性別などの属性によって取扱いに差異を設けることは不適切」「都議会でしっかり議論していただきたい」と答弁しました(https://twitter.com/kirayoshiko/status/1387597455995203587 )。
 弁護団としても、この問題についてしっかりと議論し、近日中に、意見書等の形で発信していきたいと考えています。

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