虐待・いじめ・デートDVなどの暴力防止ワークショップで筆者が出会った多くの子どもたち。その子どもたちから受けとったことを、多くのおとなに伝えていきたい。その思に押されてこの本ができました。
日々、出会う子どもたちの中には「自分はすごい人間なんかじゃない」「自分一人くらいいなくたってなにも変わらない」と口にする子もいます。
競争社会なかでともすると私たちは常に人と比べてしまいがちです。そんな時、人との比較ではなくて「世界でたった一人の存在」「一人ひとり違った可能性を持った人間」として子どもたちを認め、自分を大切にしてほしいと強く願います。
第Ⅰ部では、CAPプログラムで出会った小学生の子どもたちについて。
たった1時間のワークショップで変わる子どもたちの力に「暴力はダメ」と言わずに暴力をなくしていくことができるそれが「信念」となったエピソードが。
第Ⅱ部では、「デートDV」という言葉に出会い、予防プログラムを開発、提供、相談体制構築に取り組んだ経緯。その中で誕生した「暴力を受けずに生きていく権利」「自分で自分を大切にしていい」について。
第Ⅲ部では、「Personal is political(個人的なことは社会的なこと)…社会を変えていきたいと思う筆者の思いについて。
そして、「あとがきにかえて」のなかで、こう綴られています。
筆者の一番伝えていきたい言葉、それが「暴力を受けていい人は一人もいない」。
どんな理由があっても、誰からであっても、暴力を受けていい人はひとりもいない。だから、もしあなたが暴力にあったとしても、あなたは決して悪くない。
自分を責めなくていいと思えたら、もっと身近なところに「暴力」と「人権」を感じることができるのではないでしょうか。そして、誰もが被害者にも加害者にもなりうると思えてこそ、困ったとき、怖かったとき、なんだかいやだなと思ったとき、お互いを助けることができるのだと思います。
誰もが自分の人権を知ることができたら、暴力を受けずに生きていく権利をもった「とっても大切な人」だと思えたら、きっと「暴力」をなくしていけと信じている。これからも「人権」を伝えていく活動を続けていくと結ばれています。
この本の内容
目次
●──もくじ
はじめに
Ⅰ CAP(子どもへの暴力防止)のなかで学んだ
子どもたちの生きる力
◆子どもにアドバイスはいらない
◆いじめられていい人はひとりもいない
◆決して子どもたちを怖がらせない
◆対等なおとな
◆なっちゃいけない気持ちはない
◆権利とは生きていくためになくてはならない
◆権利を守るためにできることを考える
◆トークタイムで話す子どもたちのつぶやき
◎家に誰もいない不安──小4男子
◎気持ちを吐き出したら笑顔に──小3男子
◎親を心配させたくないから話せない子──小5男子
◎加害に気づいた子──小4女子
◎自分が大切な存在であることに気づく子──小3男子
Ⅱ 暴力を受けずに生きる権利
──デートDV予防活動で伝えたいこと
◆「デートDV」との出会い
◆初めてのデートDV予防ワークショップ
◆コンパスで手を傷つけている女子生徒
◆デートDVは起きていた
◆学校現場と専門機関の顔の見える繋がりをつくる
◆デートDV一一〇番の開設
◆デートDVの構造を理解する
◆あなたは決して悪くない
◆子どもたちのつぶやきを聴く
◆ワークショップは初めが肝心
◆呼ばれたい名前──人権を伝える第一歩
◆暴力は殴る・蹴るだけでない
◆暴力を受けずに生きる権利
◆自分で自分を大切にしているとき
◆「気持ち」は心のサイン
◆対等な関係
◆「ありがとう」「ごめんね」
Ⅲ Personal is political(個人的なことは政治的なこと)を胸に刻んで
◆CAPスペシャリストになる
◆Personal is political(個人的なことは政治的なこと
◆「デートDV」を社会を変えるキーワードにした
◆「デートDV防止全国ネットワーク」の設立
◆人と人とが対等で、お互いの違いを大切にしあうことができる社会を
◎エンパワメント
◎人と人とのつながり
◎人権
暴力に対してできること=非暴力で身を守る
──「あとがき」にかえて
◆書誌データ
書 名: 暴力を受けていい人はひとりもいない
CAP(子どもへの暴力防止)とデートDV予防ワークショップで出会った子どもたちが教えてくれたこと
著 者:阿部真紀(認定NPO法人エンパワメントかながわ理事長)
出版社:高文研
刊行年:2018/12/10
定 価:1200円(税込)
2021.06.18 Fri
カテゴリー:著者・編集者からの紹介
タグ:本