「日本映画における女性パイオニア」は、映画史のなかでこれまで軽視され、忘れられてきた女性の作り手たちの仕事を発掘し、紹介するプロジェクトです。 このたびウェブサイトが公開となりましたので、ぜひご覧ください。 https://wpjc.h.kyoto-u.ac.jp/ 今回公開した記事とコーナーは以下の6件です。 「女性パイオニアとは何か」 https://wpjc.h.kyoto-u.ac.jp/ 映画は国際的に見ても女性の進出が圧倒的に遅れている分野であり、女性の進出を阻む「ガラスの天井」ならぬ「セルロイドの天井」が存在すると言われてきました。海外では女性の作り手に光を当てる取り組みがすでに始まっており、当プロジェクトでも日本独自の文脈を意識しつつ、日本の女性パイオニアたちを紹介していきます。これはまた、男性中心の「作家主義」再考を促す試みでもあります。執筆はプロジェクト代表で京都大学大学院人間・環境学研究科教授の木下千花先生です。 「スクリプターとは何か」 https://wpjc.h.kyoto-u.ac.jp/pioneer/scripter/ 記録係とも呼ばれるスクリプターは、ほとんどの撮影所で女の職とされ、現場(撮影・演出)とポストプロダクション(編集・音響など)を繋ぐ調整役として重要な役割を担ってきました。そのスクリプターの仕事を現役のスクリプター・脚本家である立命館大学映像学部准教授の谷慶子先生が解説します。今後は、谷先生による現役スクリプターの方々へのインタビューも公開予定です。 女性パイオニア「坂根田鶴子」 https://wpjc.h.kyoto-u.ac.jp/woman/303/ 坂根田鶴子は日本の女性監督第1号と言われる映画監督です。女性であるために正当な評価を得る素地さえ与えられない中で、坂根は日本の植民地政策に加担することによって、活躍の場を獲得していきました。現存する作品は満州映画協会(満映)で製作された『開拓の花嫁』(1943年)のみ。解説は同志社大学准教授の菅野優香先生です。 女性パイオニア「田中絹代」 https://wpjc.h.kyoto-u.ac.jp/woman/308/ 溝口健二監督『西鶴一代女』(1952年)などで知られる日本を代表する俳優・田中絹代は、映画監督としても活躍し、世界映画史の中でも注目すべき6本もの長編物語映画を残しました。巨匠主義の日本映画史言説において、女性監督として長い間不当な評価に甘んじていた田中の業績を、明治学院大学文学部芸術学科教授の斉藤綾子先生が解説します。 女性パイオニア「左幸子」 https://wpjc.h.kyoto-u.ac.jp/woman/208/ 日本人で初めてベルリン国際映画祭女優賞を受賞するという快挙を成し遂げるなど、戦後日本を代表する俳優として活躍した左幸子は、実は1977年に『遠い一本の道』という映画を監督していました。北海道の国鉄保線員の労働運動を描きながら、同時にその家族として社会と関わる女性の姿を捉える作品で、フェミニスト左の視線が光ります。解説は斉藤綾子先生です。 「用語集」 https://wpjc.h.kyoto-u.ac.jp/resource/ 「日本映画における女性パイオニア」ウェブサイトでは、用語集も充実させていく予定です。今回は「セルロイドの天井」等、約30項目を取り上げました。 また、ツイッターでは当プロジェクトの情報のみならず、女性の作り手による作品や上映会情報など、女性と映画にまつわる情報を発信しています。こちらもぜひご覧ください。 @women_pioneers 「日本映画における女性パイオニア」では、今後とも月1回程度の更新をめどに、日本映画におけるさまざまな女性の作り手たちの情報を発信してまいります。