アートの窓

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福島で今、思うこと 会田恵  〜福島で〝ものづくり〟をしている女性たちからの緊急メッセージ①

2012.06.18 Mon

 

福島で〝ものづくり〟をしている女性たちからの緊急メッセージを、連載でお伝えしていきます。

第1回は伊達市霊山町で遊陶窯を営む陶芸家の会田恵さんです。会田さんが「葬送の自由をすすめる会 東北支部だより」に書かれた原稿の掲載許可をいただき転載しました。

昨年12月、東京都小金井市GALLERY BROCKENで行なった会田さんへのインタビュー記事はこちらからご覧ください(イトー・ターリさんのパフォーマンスのレポートの続きに掲載)

作・会田恵 2011 GALLERY BROCKENでの個展にて

 

福島で今、思うこと  会田恵

作・会田恵 2012

霊山町に越してきて今年で18年目。四季折々の美しさを見せてくれる里山の自然の中、ささやかな幸せを大切に生きてきました。毎年2月には発声練習を始めるウグイス。ホッケホッケだったり、ケキョケキョだったり、なんともかわいらしい声で春の訪れを知らせてくれます。芽吹き始める樹々の新緑、こごみ、わらび、たらの芽と、次々に現れる山の恵み。生命の春、そのものです。

夏は蛍の幻想的な舞を楽しみながら今にも降ってきそうな星空を見上げ、秋には色をどんどん変えながら美しさを競うかのような紅葉に見とれ、冬は息をのむほど神秘的な雪景色を眺めていると、雪の上にたくさんの小さな動物たちの足跡が、心をポワンと暖めてくれます。自然の中で人間も動物の一種類として生かされていることを実感していました。それが――

 

昨年3月11日の東日本大震災と大津波、それに伴う原発事故ですべてが変わりました。津波で家族や親戚、友人知人を失った方々の悲しみや苦しみを思っただけで胸が痛みます。

私は16年前、待望の娘が生まれた年に、連れ合いを癌で亡くしました。その時にこの「すすめる会」に入ったのですが、心の中にポッカリとあいた大きな穴からは涙しか出ず、外に出てゆけるようになるまで3年かかりました。今回の津波で一度に何人もの身内を失った方たちの喪失感はどれほど深いものでしょう。あっという間の天災で奪われてしまったのですから、その衝撃は私には想像もできません。

今、福島の状況は大変ひどいものです。伊達市には放射線量の高い、いわゆるホットスポットが数か所あり、除染だ、賠償だと、人々の気持ちはどんどん荒れてゆくような気がします。お金で分断されてしまう人間関係も少なくありません。原発事故当時はいろいろな情報が飛び交い、何を信じたらいいのか、どう行動すべきなのか、一つ一つを自分たちで判断して決めなくてはいけませんでした。

それはまるで、これまでの生き方すべてを問われているかのようでした。それでも私は家族が無事に生きていることに心から感謝せずにはいられません。放射能が飛び散っているここでさえも。

放射能は目に見えません。私は、前と同じように自然や生活を楽しむことができなくなりました。人間の愚かさによって自然を汚してしまったという罪悪感で胸がいっぱいになります。去年、災害の後に開いた桜の花は、「大丈夫、私たちはちゃんと咲くよ」と、試練の中にある私たちにエールを送ってくれているかのようでした。私はその美しさ、その健気さに涙しました。

4月の新学期にあわせて家族で引っ越していった友達がいます。有機農業をやっていた友達はすでに他の土地へ移っていきました。悪いことをしているわけでもないのに、誰にも告げずにひっそりと移った人もいます。お母さんは子供たちのために県外に避難し、お父さんが仕事のために一人残っているという夫婦がたくさんいます。家族がバラバラに生活しなければならないなんて、本当にひどいことです。仕事、生活、人生、すべてがズタズタに切り裂かれてしまったのです。

苛酷な状況の中、原発で後処理のために働いている多くの人たちには心から感謝し、安全を祈るしかありません。それでも、人間の手に負えない危険な原子力で電気を作るなんて、やってはいけないことだと思わずにはいられません。

「原発は安全だ」「原発がないと電気が足らない」などという発言にはもう“うんざり”です。使い放題にしていたら何であっても足らなくなるのは当たり前のことです。

それにたとえ原発をやめられたとしても問題は残ります。大量の使用済み核燃料は、全く放射線を出さなくなるまで、長いものでは10万年もかかると聞きました。それをどのように“安全”に“保管”するのか?伊達や福島で除染のため取り除かれた「土」でさえ、いまだに置き場が決められないというのに!

地震が多い、しかも狭いこの国土に、いつの間にか54基もの原発を建ててしまった私たち大人の責任は、すべての原発を廃炉にすることから始まるのです。それが、自然や未来の子供たちへのせめてもの償いなのではないでしょうか。

(葬送の自由をすすめる会 東北支部だより 第13号より転載)

 

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6月7日「原発いらない福島の女たち」による内閣府への大飯再稼働反対申し入れ、6月11日福島原発告訴団1324名による福島地方検察庁への告訴・告発状提出に参加した会田さん。

9月14日(金)から17日(月)まで福島市飯野町の料理研究家 境野米子さんのオープンハウスにて個展が行なわれる。

 

伊達市霊山町のことをもっと知りたい方はこちら福島 ふるさと体験スクール」のサイトをご覧ください。

会田恵さんの作品についてのお問合せやメッセージは、awan@wan.or.jpまでご連絡ください。


福島で〝ものづくり〟をしている女性たちからの緊急メッセージ②こちらから
福島で〝ものづくり〟をしている女性たちからの緊急メッセージ③こちらから

(構成・写真:A-WAN すずき)

カテゴリー:アートトピックス

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