2021年12月6日に実施した澁澤塾のご担当者から、報告が届きました。
このセッション参加者を募集する際、常日頃から人間関係が形成されている方にだけでなく、幅広くSNSを使って呼びかけたことで、主催者として運営面でのご苦労があったようです。
セッションの中で、そしてその後も、ノイズが発生したことにより、主催者と参加者の関係性がいかに大切かが明確になったと、記してくださいました。

AKさん、今後応募なさる皆さまのお役に立てればと、正直なコメントをお寄せいただき、ありがとうございました。
モヤモヤしている感情を言語化し、問題を認識し、共有するという今回の経験が、主催者・参加者の皆さまにとって、多くの気付きを生み、生きやすさに繋がることを願っています。

【澁澤塾レポート    AK】

*応募動機
一橋大学では、毎年ジェンダーやセクシュアリティに関するさまざまな授業が提供され、多くの学生が受講しています。その点で、ジェンダーやセクシュアリティに関して学ぶ場は多いと言えます。しかし、日常生活で感じるジェンダーやセクシュアリティの問題への違和感や戸惑い、怒りを話し、深く考えることのできる場はあまりありません。WANジュニアプロジェクトを通して、女性学の専門家である上野千鶴子先生と、日々の生活に潜むジェンダーの問題を考え、議論することで、学生が日々のモヤモヤを形作っている社会構造を認識し、より鋭い問題意識をもってほしいという思いで応募に至りました。
当日は、参加者事前アンケートの中から質問を4つ取り上げ、全体セッションで上野先生と参加者が議論するという形式を取りました。
会全体を通して活発な議論が行われていたと感じました。参加者が41人で大人数でしたが、参加者各々が意欲的に手を上げ自分の考えを発言していた印象です。
特に、性差別発言をした人にどうやって指摘をするべきかというテーマ(下記質問1)の際に、上野先生と学生で行ったシュミレーションが好評でした。よく耳にする性差別的発言に対して、上野先生が物腰柔らかく聡明に指摘を行っていて、参加者にとって参考になるところが多かったと思います。

ただ、会における参加者の心理的安全性の担保は不十分だったと感じています。性被害や性差別はセンシティブなトピックであり、場合によっては本人の実体験を開示する事もあると考えると、参加者が安心して参加し、発言できる場づくりが主催者側には必要不可欠だと思います。議論を始める前は「参加者同士の交流」や「イベントが参加者にとって安全であることの発信」、また交流会後に「電話相談できる場所を紹介する」アフターフォローなど、参加者の心理的安全性を担保するための細かな努力が必要だと思います。

また、イベント主催者側は、「イベントは何が目的でどのようなことを話し合うのか」ということを参加者側に発信し、理解してもらうことが大変重要であると感じました。というのも、参加者側からイベントの中でどこまで自分のことを話していいのかが分からず戸惑ったという意見を頂いたからです。参加者の活発な議論を促進するには、事前にイベントの目的とイベント内で求められる話の内容(「実体験を話してほしい」「実体験ではなく社会にある事例を話してほしい」など)を参加者に詳細に伝えることが必要だと思います。

本イベントで参加者事前アンケートから取り上げた質問は、以下の4つです。
質問#1 会話の雰囲気が和やかな場で性差別的な発言が出たとき、その発言の問題点をきちんと指摘したいが、言い回しに悩む。上野先生ならどのような伝え方をしますか?
質問#2 女性側も、男尊女卑的な思考を残存させてしまっているのではないかと思う時がある。「男性が奢り、女性は奢られる」関係性を維持している話を耳にすると、女性側も考えを変えていかないと、男女平等は難しいと思う。実際そんな古い考えの人は多くない上に、 そういう人とは関わらなきゃいいやという形で整理した。なぜ、未だにこのような非対称な関係性が存在・存続しているのか。モヤモヤする。
質問#3 メイクは男性のためにするものという考え方が、なぜあるのか。私が自分の好みの服装やメイクをしていると、親に男ウケが悪いからやめなさいと言われた。私は自己表現のつもりであるのに、自分の好みすら男性主体に考えなければならないなんて我慢できないと憤慨した。親と私の世代差による価値観の違いであると納得することにしたが、 気持ちが収まらない。
質問#4 一橋大学のとても優秀な同期の女子が、将来の夢は専業主婦と言う。このような高学歴の女性が、なぜ、専業主婦になりたいと言うのだろうか。人生一度きりなのに、自分から脇役になりたがるのことが理解できない。その時は、生き様は多様であり、否定している自分が情けないと思い、モヤモヤに対処したが、納得しきれず質問したい。

参考:澁澤塾について
「一橋生に幅広い選択肢と挑戦する機会を提示することで一橋生を盛り上げ、一橋大学を 盛り上げ、社会を盛り上げる」ことを団体理念に掲げ、講演会企画や国立市を舞台とした 地域活動、学年・学部横断の学内最大のコミュニティを運営する大学公認の学生団体で す。参加者が部活・サークル・就活、ひいては一橋大学内では触れられない多様な生き方 に触れ、「学び・思考・実践」のサイクルを回しながら自分自身を更新することができるよう 後押しする団体です。
今回の会の主催チームであるみなみなプロジェクトは、澁澤塾の国立で地域活動を行うチーム、Kuni Projectの一プロジェクトです。「みんなちがってみんないい」をモットーに、性の多様性が認められる社会を目指して活動を行っています。国立旧駅舎での展示やインスタグラムでの発信を行った活動実績があります。
今後は、国立市の小中学校を訪れてジェンダーに関する講義を大学 生自身が行ったり、大学内において参加型アートの展示を実施したりしたいと考えています。