「女性が学歴をつけても結婚できないね」
「東大なんか行ったらお嫁に行けないからやめた方がいい」

これは、本書に登場した東大女子たちが実際に母親から言われていた言葉です。

取材を始めるまでは、著者は東大女子のインタビューを通して、職場での出世を阻む日本社会の「ガラスの天井」が見えてくるのではないかと想定していました。

ところが実際には、もっと手前の段階で、母親や周囲の男性から「女性」として位置づけられることで生まれる生きづらさが彼女たちを苦しめていたことが分かってきました。

周囲の人に自分のことを理解してもらえない孤独。
男性中心のサークルや女子NGの研究室。
男性原理のアカデミアでのセクシュアルハラスメント……。

そのような生きづらさを感じたときに、泣き寝入りしないのが彼女たちの強さでもありました。

人生の「壁」にぶち当たっても、何度でも人生をやり直して立ち上がるレジリエンス(=再起力)を持っていたのです。

本書に登場する“東大女子”のうち、少なくない数の方が、最終的に企業や組織を離れる決断をしています。

一つの企業・組織で一生を終える旧来の価値観で言えば、企業や組織を離れていく女性たちは「道を変えざるを得なかった」というふうに見られてきました。

しかし、彼女たちは、組織を離れて自ら違う道を選んだことで、個を磨き、何度も環境を変えながら道を切り拓く力を身に着けていきました。

一見、道を閉ざされたかに見えた彼女たちの生き方は、これからの時代に求められている働き方の先駆けでもあったのです。

孤独や挫折、ジェンダーの問題など、誰もがぶつかる「壁」に彼女たちがどのように乗り越えたか。

彼女たちの生き方を通して、誰もが自分らしく生きるヒントを見つけていただければ幸いです。

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第一章 東大女子は第二東大生?
第二章 均等法の前と後
第三章 過剰適応の果てに
第四章 優等生という病
第五章 少数派の地方公立出身者
第六章 結婚の「王道」
第七章 東大男子もつらいよ
第八章 新しい世代へ

◆書誌データ
書名 :東大女子という生き方
著者 :秋山 千佳
頁数 :256頁
刊行日:2022/3/18
出版社:文藝春秋(文春新書)
定価 :1078円(税込)


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東大女子という生き方 (文春新書 1356)

著者:秋山 千佳

文藝春秋( 2022/03/18 )