抗議文

内閣総理大臣 岸田文雄様
総務大臣 松本剛明様

日本政府は杉田水脈総務大臣政務官を直ちに更迭し、日本軍「慰安婦」問題解決を進めるよう求める

 杉田水脈総務大臣政務官によって繰り返される差別・ヘイト発言が国会で取り上げられたことを受けて、12月2日松本剛明総務相は杉田議員に発言を撤回・謝罪するよう命じた。しかし、杉田議員は一部発言については撤回したものの、 差別する意図はなかったとして、野党議員の質問に同じ答弁を繰り返すなど、反省はみじんも見られない。
 杉田議員は、「男女平等は、絶対に実現し得ない反道徳の妄想」「日本に女性差別は存在しない」「LGBTは生産性がない」「女はいくらでもウソをつける」などと言って、苦しみをのりこえ、勇気をもって声をあげた人々を侮辱し、尊厳を踏みにじった。右派言論や雑誌、ブログなどを通して自らの主張を広く流布し、ツイッターなどの差別発言に「いいね」を何度も押して拡散させるなど、その行為は重大なヘイトクライムだ。
 日本維新の会、次世代の党、自民党と渡り歩いた杉田議員が、今日、大臣政務官の地位を築く出発点は2013年12月、日本維新の会議員として、米グレンデール市を訪問し、「平和の少女像」の撤去を求めたことにさかのぼる。帰国後、国会で関連質問を行い、各国に建てられている「慰安婦」像や碑の撤去、および河野談話が反日の情報発信源であるとして、河野洋平元官房長官の証人喚問を求める国民運動を提唱した。
 そして、2016年に杉田議員は当時落選中であったが、ジュネーブで開催中の国連女性差別撤廃委員会に乗り込み、米国右派団体メンバーらとともに現地で集会を開き、「慰安婦」の強制連行はなかったと主張した。こうした行動を「なでしこレポート」として産経新聞に連載し、右派メディアに頻繁に登場。それら一連の言動が安倍元首相の目に留まり、自民党国会議員として復活した。その後、男女共同参画撤廃や「慰安婦」像の爆破など、過激な発言を繰り返しながら、男性優位の政治の世界で右派の主張をする女性として重用されてきた。
 2019年には「慰安婦」問題に関連して科研費の助成を受けた研究者らを「反日」と執拗に誹謗・中傷し、「ねつ造」「科研費不正利用」などのデマを流して、現在、名誉毀損などで提訴されている。
 そのような杉田議員を、岸田首相は今年8月、第二次岸田内閣で総務大臣政務官に抜擢した。首相は「適材適所」と抗弁しているが、ブログやネット上の誹謗中傷を取り締まる立場にヘイトスピーカーの杉田議員を任命したことは、まさに岸田首相の責任と政府の差別や人権に対する認識が問われる事態である。
 また、日本政府は「強制連行はなかった」「性奴隷ではない」「20万人のウソ」という主張を続けており、外交方針としている。そしてだれよりも熱心に政府の立場を発信し、「慰安婦」問題解決運動を「反日勢力」と攻撃してきたのが杉田議員だ。杉田議員の言動が問われるということは、まさに日本政府の歴史認識や外交姿勢そのものが問われているということだ。「慰安婦」問題の根底には女性蔑視や家父長的女性差別構造があり、日本政府はそれらと向き合うべきだ。
 岸田首相が杉田議員をこれ以上続投させることは、個人の人権尊重やジェンダー平等に向かう国際社会の流れにも真っ向から反する事態だ。
 岸田首相は直ちに杉田総務大臣政務官を更迭し、歴史修正主義にもとづく2015年の日韓合意は解決ではなく、日本軍「慰安婦」被害者らへの対応がどれほど尊厳を奪う、恥ずべき行為であったかを認めるべきだ。
 岸田首相に、被害者の声に向き合うことで問題解決の出発点に立つことを強く求める。

2022年12月26日
日本軍「慰安婦」問題解決全国行動
共同代表 梁澄子 柴洋子