「市長公室の木村さんが」(南澤あつ子一人芝居)、「あの少女の隣に」(宮村信吾ー人芝居)というお芝居のご案内です。

戦時性暴力をテーマにした、くるみざわしん(作・演出)の一人芝居です。舞台自体が感動的ですが、作家や俳優さん、上演に関わる皆さんの心意気が素晴らしいです。
今年は、大阪、鶴橋のコリアタウンに近い「まちの拠り所 yosuga」という小さなコミュニティスペースで上演されています。席数は少ないですが、一人でも多くの方にご覧いただきたいです。

以下、チラシの情報(チラシを添付)です。

「市長公室の木村さんが」南澤あつ子一人芝居
3/19 9/17 11 /19計3回

市長公室初の女性職員である木村さんは「飲み会を絶対に断らない女」。男ばかりが優遇される職場で実績をあげ、幸運を引き寄せるために仕事も絶対に断らなかった。ところがその木村さんに、「平和の少女像」を設置したドイツの姉妹都市に市長が出す手紙を翻訳せよーという命令が。手紙を出せば他国の自治体への介入になる。そもそも市長の手紙には主語がない。どう訳したらいいのか。困りに困る木村さんを助けてくれるひとはいない。いったいどうすれば。

「あの少女の隣に」宮村信吾ー人芝居
2/19 4/16 10/15計3回

舞台にはイスが2つ。荷物袋を抱えた男が通りすぎる。気配を感じて立ち止まった男は、あなたに向かって語り始める。荷物袋から、銃、ヘルメット、軍靴、水筒、乾パンを取り出し、イスに並べる。男は戦争を語っている。戦争と男が、明治の初めから現在までどんなふうに関わり、何をしてきたのか。男の話は脇にそれながら、少しずつ男の正体を明かしてゆく。なぜ荷物袋を持ち、ここにやってきて、あなたに話しかけるのか。少女とは誰なのか。

くるみざわしん(作・演出)のメッセージ
2019年の「あいちトリエンナーレ」で「表現の不自由展•その他」が公開中止に追い込まれた時、誰かと話がしたくなって、演劇関係者の集まりに参加した。参加者の一人が口を開き、何を言っているのかわからなかった。数人が質問し、その人は日本軍慰安婦が事実なのかわからない、事実ではないかもしれないという前提で発言しているのがわかった。学歴という点から見ればおそらく教育程度の高いその人の発言を聞きながら、学校教科書から日本軍慰安婦の記述を消したことの効果がこんなふうに現れているのだと思った。よくしゃべるその人は言葉の能力には優れているのだろうが、その力は隠ぺいに見事に利用されている。本人なりに考えてしゃべるほど論はふくらみ、他の分野の論や事例を吸収して大きくなってゆくが、出発点での認識が誤っているので、何が言いたいのかわからなくなってゆく。そのわからなさ具合を楽しむのが芸術だ、演劇だと言い出すんじゃないか。演劇にあらためて目を向けてみると、日本軍慰安婦を主題にした演劇作品がそもそも少ない。ないことにしてはならない国家犯罪であり、戦時性暴力という国際的で緊急の問題に取り組む作品がほとんどない。私自身も書いてない。「表現の不自由展•その後」の中止をうみ、あの人の発言をうんでいる。戦時性暴カ・日本軍慰安婦をテーマに芝居を何本か書いて、それぞれを月1回上演すれば毎週どこかで戦時性暴カ・日本軍慰安婦の芝居を観ることができる。そんな状況を大阪に作ってみたい。新型コロナに遮られて、なかなか前に進めなかったが、ようやく2作のロングランが実現する。毎週とはゆかず、月1だが、上演にこぎつけた。観に来て欲しい。

「まちの拠り所 yosuga」
https://hitokototumugu-yosuga.com/