「死に際体験」を複数回している著者が、鳥取大学医学部の安藤泰至准教授に「死に逝く意識(自分の死に向かっているときの脳内)」を伝えながら、発表された科学データを交えて、《死と命》について考察した丸5年の記録です。
「死に際体験」をして分かることは、健康な時に考える「自分の死」と実際に死に向かっているときに味わう「一人称(自分)の死」は全く違うという事です。著者が定義する「自分の死」は健康な時に〈概念として考える自分の死〉です。一方「一人称の死」は〈死に逝く内側を体験していく死〉です。多くの人は、健康な時に考える「自分の死」と死に向かっている時の「一人称の死」はかけ離れていないと思っています。しかし、この二つはかけ離れています。この違いを理解するためには〈死んで逝く本人の脳内〉を知る必要があります。著者はそれを「死に逝く意識(自分の死に向かっているときの脳内)」として、安藤泰至准教授にメールでお伝えしながら、「死に逝く意識」を起点として様々な問題を考えています。また、著者は、孫の誕生と世話、母親の介護と看取りを同時期にしていましたので、人が生まれて死ぬまでの姿を実際に見つめる立場に居ました。その立ち位置で「人の誕生と成長、そして死ぬこと」についての考察もしています。
安藤泰至准教授と著者がメール交換を始めたのは2018年の10月です。今回は2023年10月末までの記録です。この5年間に新型コロナウィルスのパンデミックが起こり、公立福生病院の人工透析中断事件が発覚し、スイスで安楽死を選んだ日本人女性のドキュメンタリーが放送され、京都ALS患者嘱託殺人事件も起こりました。「尊厳死・安楽死」をキーワードとするこれらの事件への考察もしてあります。
目次は以下の通りです。「死と命」「高齢者医療と尊厳死」「安楽死」等々について是非考えていただきたいと書籍としてまとめました。御協力いただいた安藤泰至准教授には深く深く感謝申し上げます。
電子版は無料配信になっています。クリックしていただくと直ぐ読めます。
もくじ
播磨澪から、安藤泰至先生への手紙
安藤泰至先生から、播磨澪へのメール
播磨澪から、安藤泰至先生へのメール 《2018年11月4日~2023年10月25日》
『生存する意識』を読んで
『「尊厳死」議論の手前で問われるべきこと』を読んで考えたこと
私の「一人称の死」そのものについての検証と議論の必要性について
「尊厳死」と超高齢者の終末期について
AIとソクラテスと「死」
AIの出現で考えるべきことは何?
公立福生病院での「人工透析中止」事件
《滑りやすい坂》の話・NHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」を観て
小島ミナさんを追った『安楽死を遂げた日本人』(小学館)の感想
倫理学者 ウェデル・ウォラックの話・小説「平成くん、さようなら」を読んで
『安楽死・尊厳死を語る前に知っておきたいこと』を拝読して
哲学者ダニエル・デネットの話
何故、人は「よい死」を求めるのか
「死」が概念になるのは仕方ないのですが
「臨床哲学カフェ」の話
理性をそぎ落として初めて見えるもの
人間の「命」は生まれたときから死ぬまで「生存欲」と「承認欲求」を失うことはない
『末期がん患者さんへの手紙』について
テレビドラマ『家政婦のミタ』の話
小論の感想
京都ALS嘱託殺人事件について
NHKニュースの京都ALS嘱託殺人事件報道について
京都ALS嘱託殺人事件と座間連続殺人事件
オンライン公開講座「患者学」の感想
お医者様の「大丈夫、明日は来ますからね」は魔法の言葉
「反出生主義」へのつぶやき
人間の「脳の癖」の話
『最後の一息まで、あなたとして息をして・・末期がんのあなたへお伝えしたこと』の話
アメバプライム(ABEMAPrime)での安楽死の特集の感想
安楽死容認を止める武器は、実例の掘り起こし
人間の脳は心臓が止まった後も数分まだ「生きている」の話
西欧哲学というのはキリスト教との闘いの歴史では?
『死と向き合う言葉 呉智英、加藤博子の対談』の感想
スペインで安楽死と自殺幇助が合法化される
スペインの合法化を受けて「安楽死」「自殺幇助」を考える
ライオンに食われている時のシマウマの脳内の恐怖について
私は《かたりべ》
小説『いのちの停車場』を読んで
「死の考察」に関しての従来の「哲学」「人文学」「生命倫理の概念」の限界について
自殺したい子供たちへの手紙
脳の基底核について
2021年8月24日の夕方の都内の民放のテレビのニュースをみて
『十代二十代三十代の「死にたいなぁ」と思っているあなたへ 《かたりべ》からの手紙』と『命とは何か、死とは何か』の報告
「安楽死推進」は、自己洗脳
過去の言葉に、患者本人が苦しめられる問題… 未来の自分の死は、他人事としての死
小説『生を祝う』を読んで
とにかく生き続けてみなければ分からない
オランダの安楽死特集をテレビで観て
電子書籍出版のお知らせ
鳥取県の豪雨災害のお見舞い
オランダの1歳~12歳未満意思確認できない子供の安楽死問題で気になった事
読売ドクターの記事
2023年9月22日安藤先生より9月30日「PLAN75」シネマカフェのお誘い
5年間のメールをまとめる企画の相談
「安楽死推進派の声」と「キリスト教圏の安楽死の波」を止める防波堤は何?
あとがき
本書に寄せて 安藤泰至先生より
Amazonアマゾンhttps://www.amazon.co.jp/dp/4815041962
電子版 https://puboo.jp/book/135613
◆書誌データ
書名 :『生命倫理研究者に死に逝く意識を伝えた記録』
著者 :播磨澪
頁数 :242頁
刊行日:2024/2/26
出版社:デザインエッグ社
定価 :2406円(税込)